切り離せない関係
ワシントン州 ハリソン夫妻の自宅 二〇一五年七月二四日 午後八時五五分
三人が何気ない世間話を楽しむ中で、こういった話に一番食いつきそうなマーガレットは無反応。それどころか青ざめた顔をしながら、エリノアが持ってきた一枚の写真をただじっと見つめている。そんなマーガレットの様子に気が付いたジェニファーは、
「マギー、どうしたの? そんなに怖い顔して……」
珍しく眉間にしわを寄せるマーガレットの顔を不思議そうに眺めている。
マーガレットに続いてジェニファーもその写真に写っている人物を確かめようと、視線を移す。だがその写真を見た瞬間、マーガレットに続いてジェニファーも言葉を失ってしまう。
「ジェニー、メグ。ふ、二人とも大丈夫!? どうしてそんな狐につままれるような顔をしているの?」
「…………」
だが香澄からの問いかけに、マーガレットとジェニファーは何も返そうとはしない。二人は一種のショック状態に陥っているようで、恐怖のあまり言葉を失っているようだ。
「もぅ、仕方ないわね。……一体誰がエリーと一緒に写っているのかしら?」
二人が言葉を失ってしまった人物の正体を確認しようと、写真が置いてあるテーブルに視線を移す香澄。
香澄がちょうど写真に目を向けようとした矢先、補足説明をするかのようにエリノアが写真に写っている人物の特徴を述べる。
「実は私って初対面の人と仲良くなるのが苦手なんですけど、でもなぜかその人たちとはすぐに打ち解けることが出来たんです。不思議ですよね!? ……それで、私の隣に写っている子の名前ですけど」
「何よ、エリー。相手の名前を最初から知っていたの!? そういうことは写真を見せる前に言いなさい」
「ご、ごめんなさい香澄。今後は注意するから……ね?」
恥ずかしさによって少し顔を真っ赤にしつつ、顔を下にうつむいてしまったエリノア。そんなエリノアの顔を見つめながらも、どこか小悪魔のような笑みを浮かべる
香澄。
『まったく、ドジな所はジェニーにそっくりだわ。本当にもう、世話が焼けるんだから』
そう心に思うものの、まんざらでもない様子の香澄。……どうやら香澄は世話好きな性格のようで、ジェニファーやエリノアのようなどこか性格が抜けている子を見ると放っておけないようだ。
だがそんな穏やかな気持ちだった香澄も、写真の写る人物を見た瞬間心が凍りついてしまう。そして二人と同様に、香澄もまた一枚の写真に心から恐怖する。
そんな香澄たちの様子の変化を知る由もなく、淡々と事実を語るエリノア。
「その子の名前はね、トーマス・サンフィールドって言うのよ。私やこの子のご両親は“トム”って呼んでいるの。どう、可愛い男の子でしょう!? そして私とトーマスの隣に写っているのが、この子のご両親 リースとソフィーです!」
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