東京で独り暮らし


独り暮らしの暗く寂しい家へと帰る道中

あのねヨーグルト

という商品をコンビニで見つけた

乳酸菌が腸内で大暴れと書いてある

『あなたの腸が今夜、戦場になる………』

そのような触れ込みが成されていた

ハリウッドもびっくり

筋肉質のおそらく乳酸菌を模したものと思われる屈強な戦士が上半身、裸でマシンガンの弾丸を肩から垂らし辺りに睨みを利かせていた

おれは怯えた、ぶるぶるぶるがりあ

突然、肩に手を置かれた

「ぼくのパンツ知りませんか?」

呆然とするおれ

「いや多分、知らないと思いますけど」

「そうですか」

そいつはおれの目の奥をじっと見つめながら言った

「ぜひ探してみてください」

おれは適当に話しを区切ってそそくさと店を出ることにした

帰り道

さっきのことを思い出していた

なんだっけ? ぼくのパンツ?

よく思い出せない

家に辿り着いた

寝た

現実は辛く厳しいことばかりだから寝るのが一番だ

子供の頃には信じられなかった欲望だ

その晩、夢を観た

学生時代の友達とサッカーをしていた

だがボールは人間の頭部だった

(一体、誰の?)

おれは怖くてそれを直視、出来なかった

向こうの方を見ながら蹴っ飛ばした

誰かの怒鳴る声が遠くで聞こえた

目覚めの悪い朝

テレビを点けると昨夜、一緒に夢の中でサッカーをやっていた友達の一人が田舎で死んでいた

「ああ………懐かしいなあ」

おれは画面に映った地元の風景に今年の夏の帰郷を考えた

どうせ行ったら行ったで家畜の匂いが立ち込める不快、極まりない農村地帯に嫌気が差しものの数秒で鼻をもぎ取りたくなる衝動に突き動かされることはわかっているのだが


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