地球一周の旅


地球一周憂鬱の旅が始まった

まず缶詰のパインが話しかけて来た

「頑張ってくださいね」

ああ

「もっと笑えよ」

何様のつもりなんだ

頭にきて頭から食いちぎってやった

もう二度と会話をしようなんて思うなよ馬鹿野郎が

地面に淡を吐いた

水色だった

………

それは見て見ぬふりして先を急ぐことにした

何しろ地球一周なのだ

本当にこの世界が地続きなのかどうか調べてみる良い機会だ

もしかしたら世界の果てが奈落の底まで続く崖なのかもしれないからな

「蜂の巣になりませんか?」

唐突なお誘い

考え事をしていたので前後の文脈はわからないがきっとろくでもないのだろう

首を縦に振る連中の気がしれないよ

お前の首から上が分離しませんかと提案したら何も言わなくなった

扇風機と会話していた方がまだまし

仮に四方から弾丸が飛んで来たとしてもおれの反射神経が避けるが

「一泊二日、七十万ペソ」

晩飯に用意された茹で立てパスタを二階の窓から鍋ごと放り投げてやった

表で悲鳴が聞こえたからきっと誰かに直撃したのだろう

日頃の行いが物を言う

おれは腕時計の針を止めた

というかむしり取って投げ捨てた

時を止めたかったのだ

だが真実の時だけがどんどんと勝手に過ぎ去って行った

待ってくれよおう

下半身、丸出しでみっともない姿のおれが追いかけた

途中で自転車に乗り込み追いかけた

自転車が微笑んだ

(なんだこいつは?)

凄まじく不気味なのでぶん殴ってやった

月のうさぎに敬礼をかます先住民たちとも出逢った

おれも真似してお辞儀をした

その角度がやばかったらしく研ぎ澄まされた石が先端に付いた槍で何度も突かれた

一人残らず銃殺した

上半身、素っ裸のくせに調子に乗るなよ

時には野宿を余儀なくされ蟻と一緒に寝ることになった

まあ奴等にその感覚は無いが

(えらくでっかいものが転がっていて邪魔だな………)

ここは何処だ?

「繊細な味でやんすねえ」

突如、背後から現れた奇妙な出っ歯の批評に思わず困惑する

そいつは酸素の味がわかるという

直後、喉を掻き毟りたくなるほどの渇きに襲われた

おれにここの空気は似合わない

クジラに乗って逃亡

途中、襲われていたラッコの群れを助けたお礼にダンスを見せつけられた

まるで幼稚園児がうろうろしてるような不快なダンスだった


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