偉人、死す


うちの庭に

よくサイゴウタカモリがやって来る

あのサイゴウタカモリだ

サイゴウタカモリはいつもお腹が減っている

だからわたしは夕飯の残りなどを食べさせてやる

サイゴウタカモリは出された物なら何でも食べる

脇目も振らずに一心不乱に貪り喰らう

早く食べないと他の奴に取られると思っているのだろう

全くサイゴウタカモリは馬鹿だなあ

やがて食べるだけ食べるとサイゴウタカモリは何も言わずに去る

羽織りを風になびかせ今さっきまで残飯を漁っていた素振りなど見せない

ある日わたしがいつもの道を散歩していると

何か寝そべっているのを発見した

おそらくサイゴウタカモリだろうなと遠目に思った

やはりそうだった

サイゴウタカモリは口から血の泡を吹いて死んでいた

「………」

どうやらサイゴウタカモリの存在を快く思わない近隣住民が毒団子を設置したらしい

サイゴウタカモリのことだ

きっと地面に置かれたそいつを疑うこともせず食べてしまったのだろう

わたしは猛烈な怒りに駆られ叫んだ

「サイゴウタカモリを返せ!」

「サイゴウタカモリを返せよう!」


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