空に亀裂が走る
俺は人生初のナンパを試みようとウキウキした気分で、声を掛ける相手を探していた。
清楚な雰囲気の可愛い女の子を見つけて声を掛けようとした時、耳を劈くような音が聞こえて思わず足を止めた。
轟音は頭上から聞こえた気がした。恐る恐る顔を上げ、俺は愕然とした。自分の見た光景が信じられなかった。雲一つない晴天の空に、亀裂が走っていた。亀裂は遥か彼方まで続いているように見え、境目は確認できなかった。まるで蜘蛛の巣を思わせるかのような広がり方に恐怖を覚えた。
いったい何が起きたのかが理解できないまま、呆然としていると、空に走った亀裂から奇妙な生物が飛び出してきた。その生物は嘴が細長く、複眼は赤く光り、巨大な翼を羽ばたかせ、胴体から6本の黒色の脚が生えていた。鳥のようにも昆虫のようにも見える不思議な生物だった。
得体の知れない生物の出現に俺は怯えた。他の人々もパニックに陥っているようだった。奇妙な生物は奇声をあげながら、襲いかかってきた。
俺は慌てて逃げ出そうとしたが、誰かに突き飛ばされて尻餅をついてしまった。俺を突き飛ばしたのは、声を掛けようと思っていた女の子だった。必死の形相からは清楚な雰囲気は微塵も感じられなかった。
女の子が次々と人を突き飛ばして逃げる姿を視界に捉えながら、急いで立ち上がった。駆け出そうとした瞬間、背中とお腹に激痛が走った。細長い嘴がお腹から突き出ていた。
意識朦朧となりながら、最期に俺が見たのは女の子が複数の奇妙な生物に食い殺される光景だった。
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