ぬか漬け

 雄太ゆうたはわずか二歳という若さでこの世を去った。夕飯の支度をしようと雄太から目を離してしまったのだ。気付いた時にはすでに遅く、雄太はオモチャを喉に詰まらせて死んでいた。窒息死だった。

 最愛の息子を亡くし、私は一人ぼっちになってしまった。夫はいない。雄太が生まれた時に離婚している。

 私は心に空いた穴を埋める方法を必死で考えた。辿り着いた答えは己から生まれた命を自分に返すことだった。

 そしてついに心に空いた穴を埋める日が来た。私の目の前には大きめの瓶がある。瓶にはぬか床が入っている。瓶の蓋を開けると、ぬか床に手を入れて、目当てのものを取り出した。

「久しぶりだね、

 ぬか漬けとして生まれ変わった雄太は黄ばんでいた。ぬか床にずっと漬けていたからだろうか。

 雄太のぬか漬けを食べやすいようにカットすると、皿に入れてテーブルに運んだ。

「いただきます」

 私は雄太のぬか漬けをパクリと食べた。旨味が凝縮されていて美味しい。雄太が私の中に戻っていくのを感じる。雄太を妊娠した時のことを思い出す。

 雄太のぬか漬けを完食した。


 心に空いた穴は埋まり、私は――雄太と一つになった。

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