藁人形
私は
このアパレルショップは私の勤め先であり、沙月さんが店長だ。
「沙月さん、私に渡したいものって何ですか?」
「私は昨日まで海外旅行に行っていてな。
「……お土産をくれるのは有り難いんですけど、藁人形はいらないです」
沙月さんが紙袋から取り出したのは藁人形だった。
「なんでそんなこと言うんだ? いくらしたと思ってる? 高かったんだぞ」
「そんなの知らないですよ。もっと他にあったでしょ? 何でよりによって藁人形なんですか?」
「だって千歳は藁人形っぽいから」
「私のどこが藁人形っぽいって言うんですか!」
「人を呪いそうなところが藁人形っぽいんだよな」
沙月さんはクスリと笑った。失礼にもほどがある。
「私のことをそんな風に思っていたなんて、それでも店長ですか!」
「私は店長である前に一人の人間だ。だから、そんな風に思ったっていいんだよ」
店長だろうと人間だろうとそんな風に思っていいわけがない。私は沙月さんの言葉に傷ついているのだから。
「それにお土産は一つだけじゃない」
「え? 他にもあるんですか?」
「もちろんだ」
「それならそうと早く言ってくださいよ」
今度はまともなお土産であってほしい。お願いだから、ヘンテコなお土産だけはやめて。
「頭に呪いたい人物を思い浮かべながら叩くと呪い殺せる藁人形だ」
「どうせそんなことだろうと思いましたよ! 結局藁人形じゃないですか!」
「そんなに怒るなよ。藁人形に罪はないだろ?」
沙月さんは苦笑いを浮かべながら、藁人形を差し出してきた。
「こんなのいらないですよ!」
私は沙月さんに腹が立ち、差し出された藁人形をバシッと叩いた。次の瞬間、沙月さんはバタンと大きな音を立てて倒れた。
「……沙月さん? 沙月さん! どうしたんですか!」
私は沙月さんの体を揺さぶった。しかし、何の反応もなかった。私はすぐに脈をはかった。
「し、死んでる」
これは私のせい? 私が沙月さんのことを考えながら、藁人形を叩いたから? 私が沙月さんを殺した?
「……さ、沙月さん」
私は茫然自失に陥りながら、沙月さんの遺体を眺めていた。
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