怪獣

 私は怪獣『スモールビビーリ』。身長は人間とほぼ変わらない。温厚だと自分では思っている。

「お腹すいたビビーリ」

 ちょうど良いところに草木が生えている。鋭い爪で根っこを切る。美味しいかどうかは食べてみないと分からない。口に含んでみる。

「まずいビビーリ」

 まあ、食べるけど。他にないから。

「さて、これからどうするビビーリ」

 コツっと音がし、びびって思わず下を見る。足に小石が当たった音だった。

 尻尾を振り回して邪魔な小石を弾き飛ばす。

「少しめり込んだビビーリ。痛いビビーリ」

 沈んだ気分で歩いていると、肩を叩かれた。後ろを振り返る。そこには人間のおっさんがいた。

「君は特撮物の敵役にぴったりだ! 君ほどの適任はいない!」

 まあ、怪獣だし、それも当然と言える。

「報酬はいくらでも払う。私の下で働かないか?」

 報酬が貰えるのか。それだったら、働いてみるのもいいかもしれない。

「どうぞ、よろしくビビーリ」

「うむ、契約完了だ」

 握手を交わす。

 

 こうして、テレビスター『スモールビビーリ』は誕生したのだ。

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