光景

 ふと目が覚めた。周りを見回すと、複数の首吊り死体があった。

 俺は混乱した。あるいはパニクってしまった。ここはどこだ。

 そうそう、俺ももうすぐ四十だな、と感慨深げに思って……る場合じゃねえだろう! 今、考えるべきはどういう経緯でこうなったかだ。

 俺は記憶を手繰り寄せる。


 ☆☆


 俺は川原でぼうっとしていた。マネーがない。ハウスもない。あるのはヒットポイントだけ。

 そうだ。人を殺して財布を奪えばいい。それでマネーは稼げる。殺人犯として逮捕されるかも知れないが、そのときは潔く諦めて笑顔を浮かべながら逮捕されるとしよう。

 早速、行動を開始した。女性を人気のないところに誘い殺して財布を奪う。死体をあらかじめ確保していた廃墟に連れて行き、ロープで首を絞めて吊り下げた。首吊り死体の出来上がり。

 これを繰り返す。またはループする。

 首をめぐらせて周りを見る。複数の首吊り死体がそこにある。

 その時、最強の悪魔――睡魔が俺を襲う。床に転がり俺は寝た。


 ☆☆


 うん、そういえばそうだった。この状況、自分で作ったんだった。忘れてたわ。マジで。

 首吊り死体の光景を見ていてふと思う。


「なんだか、てるてる坊主みたいだな」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る