WIGMAN
かつら
1.1.1 挨拶
俺はお前ら人間の毛の濃度を決める神、毛神(ケカミ)。天界には総選挙っていうのがあって、そこでは天界時間で百日間の活躍により、順位が決められるんだ。活躍っていうのは、どれだけその神が現世で必要とされたかってーのが基準になってるらしい。必要とされてると、それだけ現世の奴らから信仰されたりするんだってさ。今回で一兆回目を迎えた天界総選挙では、初めての脱落者がでたんだ。それが俺だ。俺は七十回連続でゼロ票で最下位だった。割と笑えない。四回目ぐらいで俺マジで必要とされてないんだなって思ったよね。でも、一応天界に生まれちゃった以上は使命を全うしようと努力はしてたんだ。でも、人間からちっとも信仰されないし、全然面白くないんだよね。人間が生れた瞬間に、俺はその子が将来の毛の濃度を決めるわけだが、薄くしたらそれはそれで「禿げるのは嫌だな」とか文句あるし、濃くしたらしたで、「処理が大変」とかいう文句が出てくる。感謝なんてされやしない。嫌な使命だよ全くさ。それに俺が絶対言っちゃいけないことだけど、毛を生やすか生やさないかなんて人間が自分で決めるべきだよな。しかも最近は永久脱毛なんてのもできるらしい。人間は能力も何もないのに凄いことできるよな。極め付けには、全能神に「お前存在価値なくね?w」って言われた時は絶望したよね。マジで。この脱力感は今までに味わったことなかったぜマジで。それで、この栄えある一兆回目の最下位が俺に決定したから、全能伸の意志によって俺は消滅しなきゃいけなくなっちまった。ちなみに一位はというと、あの憎たらしい全能神だ。とりあえずだ。お別れの時間が来たみたいだから、俺は消滅するぜ。じゃあな、天界。
と、思ってたんだが、どうやら神っていうのは自分で消滅するのは無理らしい。正直消えるのは怖いし、何も残せないのは嫌だ。そうだ、現世に行って、人間に取り憑いてみるか。まあ、人間は物理的な力こそない非力な生物だ。だからこそ俺なら奴らを従ることができるに違いない。だからこそ、人間は現世の生き物の中で最も神を信仰する!
フッフッフ……俺が一位になってやるぞ。俺が全能神をも超える神となってやる。俺は、神の中の神になってやる。
そして、現世へ到着した毛神は、日本と呼ばれる無宗教の国を選んだ。彼はこの国でならば、自分を信仰し始める人間がいるに違いないと期待していたのだ。人口密度の多い首都東京の地に降り立った毛神は、裏路地をそのそと歩く薄毛の中年男性を見つけた。毛神はある案を思いついた。そこで彼はその男性に声をかけたのであった。
「おい、そこのハゲ。俺と一緒に世界、救わないか?」
WIGMAN かつら @NotHage
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