第107話 エピローグ

         エピローグ



 俺はゆっくりと目を開ける。

 すると、眩い光が飛び込んで来た!


「こ、これは?」


 更に周りを見渡そうとする前に、いきなり何かが視界を覆う!


「ほんっと~に、良かった! アラちゃん! 私が分る?!」


 ん?

 まだ視界がおぼろげだが、よく見ると姉貴だ!

 そして、何故か涙を流している!


「あ、ああ、姉貴だろ? 何か良く分らないけど、何かあったのか? ってか、ここ、うちじゃないよな? 何処だ?」


 すると、俺に覆いかぶさっている姉貴の背後から、見知らぬ声だ。


「はい、ここはNGMLです。そうですか。やはり覚えていませんか。では、住吉という名前に心当たりは?」

「へ? 住吉? いえ……。ってか、姉貴! 何で俺がNGMLに居るんだ?! 俺、家で素戔嗚やってたはずでは? 後、何で泣いてるんだ?! 何があった?!」


 とにかく、何が何だかさっぱりだ!

 そして、とにかく起きようとするが、何故か体中が痛い!


「って、って、な、何だ? 体中の筋肉が悲鳴を上げている感じだ! こ、これは?」


 ここで、ようやくはっきりと見えて来た。

 姉貴は淡い緑色の服を着ており、その背後には、同様の服装の見知らぬ男。

 誰だ?


「あ~、いきなり動かないほうがいいですね~。君は蘇生した後も、丸二日間、寝たきりだったんですから。うん、今は安静にしていなさい。詳しい事はおいおい話しますから、今はそのままで僕の質問に答えて頂けますか?」

「は、はあ…」

「では、タカピというIDは覚えていますか?」

「はい、素戔嗚での俺のパーティーメンバーです。えっと、確か、お医者さんだとか?」


 へ?

 俺、何でこんな事知ってるんだ?

 カオリン以外の、メンバーのリアルなんか知らないはずなのだが?


 すると、その男は満面の笑みを浮かべる!

 更に、姉貴も釣られたのか、涙を拭いならにっこりと微笑む。


「そうですか! うんうん! そうですよ! 僕がそのタカピこと、住吉です! ええ! 貴方の主治医です! あ、リアルでは初めましてですね。うん、これは凄い!」

「へ? 俺の主治医? 俺、なんか病気だった……、いや、何かあった…、そうだ! 俺、一度死んだんだ! って、あれ? 俺、何言ってるんだ?」


 俺が混乱していると、その男は姉貴と位置を入れ替わり、まじまじと俺の眼を見る。


「うん、瞳孔の反応も問題なさそうですね。では、説明は……」


 そこで、乱暴に扉が開く音がし、聞き覚えのある声が響き渡る!


「シン! いや、八咫さん! 良かった! あたしよ! 香よ! 分るわよね?! 貴方の彼女よ!」


 ふむ、聞き覚えのある声だ。

 そして、確かにこの声は、俺の顧客兼ゲーム仲間の貴船香さんだ。


 だが、彼女ってなんだ?

 ゲーム内ではカオリンとは仲良かったと思うが、まだ付き合うどころか…。

 って、あれ?


 俺が目をしぱしぱさせていると、見覚えのある、美人の顔がドアップになる!


「は? へ? むぐ!」


 げ?!

 いきなり唇を奪われた!


「む、むぐ、ちょ、貴船さん?」


 ここで、やっとカオリンが俺から顔を離す。

 そして、何故か彼女も泣いている!


 だが、そこで何かが弾けた!

 そうだ!

 何か思い出した!


「いや、俺、確かカオリンには告白はしたけど、振られた気が…? え、いや、違う! いや、違わない! そうだ! 俺はカオリンと付き合えたんだ! って、あれ? 俺、いつ告白したんだっけ? で、カオリンとも付き合う…? そうだ! ローズだ! あの子はどうした?! あの子も…、って、あれ?」


 再び俺が混乱していると、カオリンは涙を垂らしながら、顔をくちゃくちゃにする!


「そうよ! そうなのよ! ええ! これなら安心ね! ええ! ローズちゃんは此処には居ないわ。でも、すぐに会えるわ! 住吉先生! 敦子さん!」


 これに、タカピさんらしき男と姉貴が反応する。


「はい! 想像以上ですよ! 僕も、記憶の引継ぎは殆ど行われないものと思っていましたが、ここまでとは! ええ、では、後は貴船さん、そして、生田さんに任せるとしましょうか。うん、僕は一旦これで」

「じゃ、あたしも消えるわ~。香ちゃん、まだアラちゃんは絶対安静なんだから、程々にね~」


 そう言ってタカピさんと姉貴が俺の視界から消えると、替わりに一機のドローンが俺の視界へ飛び込んで来る。

そしてそのドローンから、どこかで聞いた事のある声が、これもかなり興奮気味に流れる!


「シンさん、いえ、アラタさん、おめでとうございます! 私です。泉希です! って、これじゃわかんないですよね? あたいっす! ローズっす! いや~、しかし、あんな奴でも役に立つ事あるんすね~! あの傲慢ライトが、シンさんの意識を強引に、綺麗さっぱり押し出してくれたらしいんすよ!」



 ~~~~~~~~~完結~~~~~~~~~~~~~~~

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