第63話 姉とサモンの考え
姉とサモンの考え
「今晩は、姉貴。丁度良かった。聞きたい事が山盛りだ! 進展は? 後、あれはやりすぎだぞ? そして、あのチートツールって?」
「アラちゃん、今晩は。そう焦らないで! そうね~。進展はあったみないなんだけど、私じゃ詳しくは分からないわ~。松井さん達が、明日で全て判明するだろうって騒いでいたから、多分、まだ確証が無いってところのようね。」
ふむ、タカピさんが言っていたのと同じだな。
「それで、あのチートツール、そもそも必要だったのかな? 対策が取られていたという事は、NGMLはあのプログラムを既に解析していたのでは? あ、でも、マッハで見られたようだけど。」
「あ! あれはアラちゃん、お手柄みたいよ! 新庄ちゃんの話だと、以前にあれが出回った時は、同時期にプログラムの穴が見つかって、それを修正したら、偶々あれが使えなくなっただけみたいなの。なので、あれに関してはまだ入手できていなかったのよ。流石にチートプログラムを調べたいからそれを寄こせとは言えなかったようね。個人のPCに働きかけるタイプみたいだから。」
お~、俺でも少しは貢献できたようだ。
もっとも、あれが役に立つかどうかはまだ不明だが。
「そうか。それなら良かったよ。俺も解析に自分で協力したいところだけど、この身体じゃ無理だ。ここから外部PCとの直接の交信は不可能だからな~。もっとも、ビデオとかは、別回線を使ってやっているみたいだけど。」
「そうね~。私も良く分らないけど、アラちゃんが外部のPCに直接ここからアクセスするのは不可能ね。でも、それは開発部の人が、今何かやっているみたいよ。」
「え? それって、ひょっとして、俺がリアルに干渉できるようになるのか?」
「どうもそうみたいよ? もし出来るようになっても、アラちゃんにしか意味は無いけどね。でも、可能性を広げるという意味では、大きな進歩になるのかしら。アラちゃんも、それくらいは協力してあげてもいいんじゃない?」
「勿論、俺に出来る事なら何でも協力するよ。松井さんに言わせれば、ウィンウィンな関係って奴か。」
「そそ。だから、アラちゃんは……」
そこにサモンが帰って来た。
「あ、姐さん、居はったんですか。丁度良かったですわ。ほんで、ほんまにおおきに!」
「あら、サモンちゃん、今晩は。でも、ごめんね~。こっちの準備がまだなのよ。現状の問題を解決しない事には、あれは無理みたいよ?」
「それは構いません。その問題とやらが解決するまで、わいらも気長に待ちますわ。権利だけは認めてくれはったんで、こっちは特に急ぐ必要もあらへん。現状、他のサイトで同じこと考えてるとこは無さそうやし。」
「え? 姉貴、サモンさん、一体何の話だ?」
う~ん、俺にはさっぱりだ。
現状の問題というのは、多分俺が関係していると思われるのだが?
「あ~、シンさん、例の件や。新アバターの導入や。あの企画は一応通ったんやけど、NGML側は、あれを導入するには、プログラムの変更が必要になるやろから、今は無理やって言うねん。何でも、ある問題を先にどうしても片づけなあかんらしいわ。せやけど、それができたら、そのアバター関連の、全ての権利をわいらに独占させてくれはるんや! 当然、発案者のシンさんにも噛んでもらうつもりや。わいとクリスだけじゃ、プログラムとか、システム関連はさっぱりやからな。」
なんと! あの話、そこまで進んでいたのか!
サモンは、あれで得られる利益はかなりになると踏んでいるのだろう。そして、既に独占契約を結んだと。
「なるほど。その問題って言うのも、想像はつくよ。だが、済まない。今日も言ったけど、俺も協力したいのは山々なんだけど、俺にはちょっと事情があって、今はできないんだよ。」
うん、あれを導入するには、それなりにシステムの変更が必要になるだろう。しかし、それはやるとなると、この素戔嗚のサーバーを一旦落とさないといけなくなる可能性が高い。俺と言う厄介者を抱えた現状では不可能だ。同時にNGMLは、そんなアパレル関連で得られる収入なんかよりも、俺の研究を優先したという事がはっきりと再確認できた訳だが。
「わいかてアホやあらへん。シンさんの事情とやらは、ある程度は想像ついとる。っちゅうか、確信しとるけどな。ほんで、これ以上わいらを巻き込みたくないっちゅう、シンさんの気持ちも分かっとるつもりや。せやから急がへん。わいらも今はこのままや。せやけど、その問題とやらが片付いたら、忙しなるで~。覚悟しといてや。今度はわいらがシンさんを巻き込むからな。」
「え! そこまで分かっているなら、俺抜きで進めてくれても…、って、それは無理か。俺抜きでやれても、俺の問題が片付かない事には不可能か。でも、それなら、他所の似たようなサイトに持って行けばいいのでは? 素戔嗚以外にもVRゲームの大手は数社ある。そして、俺以外にも優秀なIT技術者は沢山居るだろう? 確かに大手企業のOSとかを組んだ事があるんで、俺も少しは自信があるが、現状はしがない個人経営のPC修理屋だよ。」
そう、俺に拘る必要は無い筈だ。
素戔嗚でできなくても、他社なら喜んで採用してくれるだろう。もっとも、独占契約とかは無理かもしれないが。
「いや、わいは今のチームが気に入ってん。シンさんのギルド入ってからのコンプ達成状況を考えれば当然や! できれば、ローズちゃんも、カオリンちゃんも巻き込むつもりや。タカピさんは無理かもしれへんけど、大きな人脈や。勿論、姐さんもお願いしますわ。」
「あら~、私は弟の件が解決したら、寿退社して、イタリアに行くつもりよ~。でも、面白そうね~! どうやって、私を巻き込むつもりかしら~?」
「姐さんの人脈は承知しているつもりですわ。イタリアと言えば、ファッションの最前線や! 今やネットのせいで、距離なんか関係あらへん。なんか、わくわくしてきたで~!」
げ! 流石はサモン! 伊達に大手ギルドのオーナーは張って居なかったようだ。
この言い方だと、俺と姉貴のリアルはもう調べがついていると見ていいだろう。 そして、これではっきりした。彼は間違いなく経営者だ! ひょっとしたら、かなりの成功者なのかもしれない。その社長さんが何故、こんな所で油を売っているかは不明だが、ここでも彼は何か大きな切っ掛けを掴んだようだ。
しかし、そこまで俺を買ってくれるのには驚きだ。たかだかゲームのクエストをコンプした程度の事が、彼には何やら重要な事のようだ。
そして、以前、俺達がこのアバの話をした時、姉貴は面白くなりそうと言っていた。ふむ、姉貴のことだ。こうなることを、ある程度予想していたのかもしれない。
「うん、何か良く分らないけど、サモンさんが、俺を買ってくれている事には素直に感謝だ。ありがとう。でも、そこまで分かっているなら、俺の可能性は、現在限りなく低い事実も知っているはずだけど?」
「せやな。せやから、わいも待つのは、後10日、いや、一週間かな? わいの読みでは、それくらいの期間でシンさんの問題は片付くはずや。逆に、それ過ぎたらもう無理なんちゃうか? あ、本人の前やったわ。えろうすんません。」
「いや、サモンさん、そういう気遣いは必要ないよ。俺も多分そんなものだろうと思っていたから。NGMLの現在の焦りっぷりを考えれば、俺にでも分かる。で、姉貴、姉貴の考えでは?」
そう、姉貴の勘は本当にいい。
もっとも、姉貴からすれば、単なる勘などではなく、恐らくは、あらゆる情報を吟味した結果、なんとなくそうななるのでは? くらいの感覚なのだろうが。
「そうね~。私も本人の前でなんだけど、そんなものだと思うわね。そう考える根拠を詳しくは言えないけれど。だからアラちゃん、後それくらいの辛抱よ。それまでは、ここでサモンちゃん達とのんびりバカンスとでも思っていればいいのじゃないかしら? 丁度、恋人も出来たようだし。」
ぐはっ!
まあ、それはいい。今更隠す事でもない。
そして、あの姉貴にこう言われると、何か安心できるな。
うん、生き返ったら、かなり忙しくなりそうだ。
俺、泉希といちゃつく時間、あるのかな?
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