人々に貢献するはずの機械達が創造主の人類に牙を剥き、結果文化も文明も何もかも滅んでしまった荒廃した世界。
生き残った人間達の導き手として浸透した世界宗教、その聖職者として各地を旅するのんびり屋だけど己の使命は決して忘れない少女。
千年前に機能停止したはずが何故か突然復活してしまった、戦闘用故に機微や情緒に疎い記憶喪失の青年型アンドロイド。
二人に同行する保護者ポジションで「先生」と呼ばれる浮遊通信端末(中の人有り)。
このポイントだけでもわくわくしますが、惹き込まれるプロローグを経てからの「記憶領域状況」「機体名」「先史人類」と、SF好きならテンション上がらずにはいられない単語がどんどん出てきてこの時点で掴みはばっちりです。
逆に上記の語句や雰囲気が取っつきづらい・難しそうと感じた方も安心してください。前提知識が必要な専門用語は無く、出てきたとしても表現は平易で解りやすいです。でも描写は緻密、読み応えばっちりなのでSF玄人も文句無し。
加えて、一度壊れてしまった世界を生きる人々の思いや在り方を伝えてくる生活・心理描写も情緒的で、ロードムービーが好きな人にもお薦めしたいです。
死ぬために旅をする少女と同族殺しのアンドロイド。二人の行く末とその先を是非とも読んでほしいです。あー続きが読みたい!
荒廃した世界を旅する少女ヒノエと、アンドロイドのクガイが、様々な人々との出会いを通じながら心を通わせていく物語。
文明が崩壊した世界ということで、ときに重苦しい場面にも出会うものの、少女ヒノエの台詞や仕草はいつも可愛らしく、また徐々に心が揺らされていくクガイの姿には、どこかふしぎな温かみがきゅっと詰まっているお話です。あと個人的に、キューちゃんが可愛い!
SF系らしい、綿密だけど読みやすい機械描写。人々の生活感なども巧みに描かれていて、雰囲気もあり、お勧めです。
世界に蔓延する棺病の謎、ヒノエとクガイの記憶を巡る旅も含め、その結末まですべて書かれています。死ぬために旅をしていた少女は、最後になにを掴むのか。この手の物語が好きな方は、ご一読をお勧めします。
棺病という正体不明の疾病、それと、機械や現代人類文明を先史と呼ぶ世界での、一人の少女が死ぬための旅をする物語。
全体的に読みやすく、すんなりと読み進められるのですが、ちゃんと設定や謎が組み込まれており、章ごとの内容もキャラの感情について書いています。
物語の中に出てくる設定も、違和感がなく受け止めて理解できます。しかし、それは決してつまらない設定ではなく、ちゃんと謎を持っています。その謎は、少女の旅の中で次々と解けていくのを読むのはすごく楽しいです。
特に第三章「戦争」で明かされたあの設定と、第五章「機械仕掛けの神はいない」の内容は、タイトルそのものに埋め込まれた意味を明かすところが良き。(本当を言うとまだ完全に明かしたわけじゃないですが、そういうことか、そういうことだろうな⁉ と思わせるのがいい)
一体棺病というのはなんだろうか、文明を滅ぼした戦争の真実はまたなんだろうか。少女の身に宿る力や、アンドロイドの女王の真実はまたなんだろうか。いろいろと残された謎は、これからもまた開示していくでしょう。
今は少し終わりそうな感じがしますが、今までの物語はただのプロローグで、これからが本番だと期待しています。