あき

作者 早瀬 翠風

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★★ Very Good!!

どうやら作者様の他に連載されていた小説のキャラクターの短編のようですが、知らずに読んでしまいました。
わたしは吉原については時代劇とかで名前が出てくるくらいの知識しかなく、吉原炎上という映画のタイトルやドラマがあったなー、でも見たこと無いなーって感じです。

それでもなんともなしにひょんなところからリンクを辿ってたまたま開いてみて切なく、無常な情景が伝わって来て最後まで読んでしまいました。

台詞が無くても読者を引き付ける力のある作品でした。

★★★ Excellent!!!

この短くも波乱に満ちた物語を涙とともに読み終え、改めて、この作品の持つ性格・条件などに驚きました。

まず、セリフも、直接的に心情を語ることもせず、【描写のみで】読者に物語を伝えるという趣旨の自主企画に参加しての作品とのことです。私もその企画は知っていましたが、難しそうなので遠目に見ていたのですが、セリフや心情描写禁止、という条件でどのようなものが描けるのかはとても気になっておりました。

いやあ、書ける方は書けるものなのですね。本当に読まされる作品でした。

このお話は江戸の遊郭を舞台としたもので、八郎という旗本、あきという遊女、その妹分である「狂った娘」の登場します。この三人の、特に「狂った娘」を巡るあれこれをわずか1500字、セリフなし、心情描写なしで描いているのです。この「描かない」具合が絶妙です。どうも小説を書く人は(自分を含め)たくさん描きたがり、そして大切なことが見えなくなる傾向がありますが、この作品はその対極にあり、「描くこと・描かないこと」についても考えさせられました。

また、コメントや他の方のレビューで知ったのですが、これは『泡沫の夢をみる』というシリーズの後日譚でもあるそうです。外伝や後日譚というのも難しいもので、本編を読んでいない人にはよくわからない(まあ、本編から読めばいいのですが)ことも多いですが、これは、単独で読んで非常に引きつけられた作品です。

★★★ Excellent!!!

女の哀しみを封じ込めたような場所
苦しくても辛くても生きていく

限られた日々の営みの中で、ほんの小さな明かりや喜びを見いだそうとする吉原の女郎屋の娘を描いた掌編です。

作者さまの『泡沫の夢をみる4 芳野のこと』の後日談です。

自主企画のルールにのっとり、セリフも直接的な心情描写もないのに主人公あきの切なさや儚さがじわりじわりと伝わってきます。その文章力たるや感嘆のため息。

花びらを散らしてゆく花とは違い咲いている花ごと落ちる椿の花。
枯れることなく命を終える花。

そんな椿に投影して彼女に想いを馳せます。
哀しくも強い
強くてもやはり哀しく儚い

泡沫の夢のような物語です。

★★★ Excellent!!!

廓。
誰かを愛する、ただそのことすらままならない、狭く過酷な檻。

その檻の中でもなお、ひとを愛することを手放さなかった主人公、あき。

側にいる人間に向け、深い愛情を注ぐ。
そんな自分の生き方を穏やかに選び取り、最後まで揺らぐことのなかった彼女は、きっと、誰よりも幸せだった。——たとえどんな運命に翻弄されたとしても。

読み終えて、不思議とそんな幸福感が残ります。

本作の参加している自主企画の厳しいルールを全く意識させない作者の筆力、表現力は見事です。


ままならない現実の中で、ひとを愛する幸せを貫いた、強く美しいひとりの女性の物語。
彼女の生きた世界に、有無を言わさず引き込んでいく。儚く美しいひと時を、ぜひお楽しみください。