第2章 怨嗟と慟哭の公女

第75話 今まで気付かなかった・・・・

「いや、何となく予想はしていたけど・・・・・」


 異世界の宿屋の部屋で、俺は一人ゴチていた。




 完全週休二日を約束通り履行した会社の方針により、休みとなった土曜日。俺は早速とばかりに1週間ぶりの異世界に戻ってきていた。


 毎度不思議に思うのは、テレビ内の階段を下りて扉をくぐると、必ずログアウト時の姿勢に戻っていることだろうか。

 今回だって扉をくぐった瞬間、ベッドの上に寝転がった状態に瞬時に変わっている。しかもそれに違和感を感じないのだから末恐ろしい。


 変なところで神パワーを実感させられる。



 戻ってきて一番最初にやったことはステータスのチェックだ。


 平日スマホでコツコツとレベルを上げをしていたので、レベルが18に上がっている。


 今の俺のステータスはこんな感じだ。



職業:システムエンジニア


Lv:18

HP:2240

MP:520

攻撃力:126

精神力:62

耐久力:98

素早さ:83

賢さ:62

体力:110

運:26


スキル

【システムメニュー】【剣術Lv2】【格闘術Lv2】【気配察知Lv1】【棍術Lv1】【植物知識Lv1】【交渉Lv1】【社交Lv1】


加護

【女神の加護】【出会いの輪廻】【異界の転移】



 どうもこの【システムエンジニア】は地球用の職業なのではないかと思われる。

 スキルとかが微妙に向こうでも使えるものが増えているし、向こうで再現できないものはこの職業には付与されないみたいだ。


 ステータス値に関しては基準値的な役割なのだろう。この数値をもとに各職業が、その特色にあった変動率で数字が変わっていた。


 これはこれで使えないわけではないのだが、何の特徴もないので異世界ではあえて使う必要はないだろう。


 それに今回は試さないといけない職業がある。


 前回の新人討伐研修中に増えた、俺が待望していた能力を持っている職業。


 【魔術師】だ。


 くくくく、これで俺もファンタジーの仲間入りだぜ。


 しかも、【魔術師】が増えたおかげか、俺のMP最大値と賢さが大幅に増えていた。脱脳筋。


 と、いう訳で早速ジョブチェンジ。




職業:魔術師


Lv:18

HP:1120

MP:1040

攻撃力:25

精神力:155

耐久力:78

素早さ:41

賢さ:186

体力:55

運:26


スキル

【システムメニュー】【多重起動Lv1】【魔法耐性Lv1】【水魔法Lv1】【魔力調整】


加護

【女神の加護】【出会いの輪廻】【異界の転移】



 おぉ、ステータスがガラッと変わったな。

 MPと精神力、それと賢さが圧倒的だ。その代わり攻撃力はとんでもなく低くなってしまったけど。

 うん、完全後衛魔法特化型って感じがする。


 スキルもこれまでとは全然違う。


 【多重起動】・・・・字面からすると魔法を複数同時に展開できるんだろうな。レベルが上がるとその数が増える、とかかな。


 【魔法耐性】は多分そのまんまだろうな。魔法を喰らった時の耐性だろう。


 【水魔法】これは読んで字のごとく。


 【魔力調整】これも何となくそのまんまな様な気がする。魔法に注ぎ込む魔力量で威力が変わるとかじゃないだろうか。これは【システムメニュー】同様にレベルが存在しないみたいだ。


 なるほどなるほど。


 しかし、こうも極端だと使い易いんだか使い難いんだか。


 攻撃力に至っては初期レベル近くまで落ちちゃってるしな。



 ま、いっか。



 何はともあれ俺のファンタジー初魔法が使えるんだ。もうウッキウッキだぜ!!


「さてどうしよっか? 森かどっかに行って魔法を取り敢えずぶっ放してみるか? 水魔法だから森でも平気だよな。多分クラリアンさんが使った魔法と一緒だろうし・・・・・・ん~、それだとちょっと芸がないというか、もったいないというか・・・・あ、そうだ。折角ギルドの講習受けて討伐して良い事になったんだから、ついでになんかクエストでも受けていけばいいか」


 我ながらナイスアイデアだ。


 そしたらついでにギルドに今まで手に入れたアイテムを売払うっぱらおうか。いらないやついっぱいあったはずだし・・・・・熊の肉とか。あれは不味かったなぁ。


 そうと決まればアイテムボックスオープン。あらかじめ出しておかないと疑われてしまうからなぁ。


 システムメニューからアイテム欄を選択。


 そう言えばアイテムボックスってほとんど見ていなかったような・・・・・・・・・は?


 あれ、こんな表示あったっけ?


 アイテムボックスにタブがついていて画面が切り替えできるようになっている。迷わず別のタブを選んで選択。ポチっとな。


「・・・・・・・・」


 現実逃避に一回瞼を閉じる。だけど目を擦っていてもメニューは変わらず出ているの意味は無し。


「いや、何となく予想はしていたけど・・・・・」


 俺はアイテムボックスからアイテムを一つ取り出した。


 職業を【商人】に変えて【鑑定眼】を使う。



 ティロリン!



 およ、【鑑定眼】のレベルが上がった。



 名前:エリクサー


 説明:どんな怪我も病気も生きていれば治す



 おう、これはついこの間動確した加藤が作った追加イベントのクリア景品ではありませんか。


 しかもそれだけじゃない。


 アイテムボックス内には俺が日本で、MMOで手に入れた武器やアイテムがリストに並んでいる。


「い、今まで気が付かなかった。何、このタブはあっちのアイテム欄ってこと?」


 マジですか。


 これってありなんすか?


 超ありがたいけど。


「俺はもう武器やアイテムをこっちで買わなくてもいいってことじゃないのか」


 レベルがリンクしていた時点でそんなこともあるかもなとは思っていたけど・・・・・・・・・素晴らしい。マジで素晴らしい。神さんグッジョブ。


 もう俺は異世界では宿泊と食事以外の金を使わなくていいってことだ。必要なアイテムはMMOで手に入れてしまえばいいからな。てことは、こっちで稼いだ金が日本で換金できることを鑑みると超ラッキーって話だ。


 おっといけねぇ涎が出ていた。


 【鑑定眼】の説明を見る限りは性能的な問題も無いだろう。なんて便利機能。


 しかし問題がないわけじゃない。


「エリクサーって・・・・・・この世界にあっていい代物なのか?」


 エリクサーって言えば伝説の霊薬で良く神薬として秘宝扱いされるもの。ゲームだってそうやすやすと手に入る代物ではない・・・・・・初心者に配っちまったが、まぁそこはまだ一個だけだからいいか。でも現実でとなると話が全然変わってしまう。


「死にそうなやつでも、四肢欠損でも全回復だもんなあ・・・・・・やばいよね」


 んん~と悩んだ末、これは見なかったことにしようとアイテムボックスにエリクサーをしまった。


 ありがたいがこっちのアイテム類は常識的なもの以外は使わないようにしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る