第15話彼女はこなかった

15 病床日記(いつか青空)

P 1961.8.12 Saturday 熱6.1~6.8

●彼女は来なかった。


●彼女に会ってないと不安になる。


●いくらふたりで結婚を前提とした交際をしていても、両方の親はどううけとっているのか、ぼくにはわからない。わたしたち戦後世代は愛し合って結婚する。そう決めていても、恋愛結婚を『なれ合い』だ、と陰口を世間ではいう。まだまだ田舎町では旧弊な考え方が幅をきかせている。いやになる。


●彼女の来なかった夜。独りbedで物思いにふける。


●蟾蜍長子家去るよしもなし 草田男 

記憶で書いているのでまちがいがあるかもしれない。ともかく、東京での勉学半ばで長男だから、家を継がなければだめだ、とよびよせられての帰省。そして発病。草田男の俳句のような状況に追い込まれている。


●結婚はぼくのすきな大垣美智子とする。こけだけは譲れない。親になんといわれても結婚相手だけはぼくが決める。と心に決めている。


●彼女は来なかった。


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