解き放たれた小鳥たち

 ――僕らを未来に遺してくれた、たくさんの人たちのためにも、どうか、どうか生きて……そして幸せになりましょう。たくさん、笑いましょう。自分の力で――


「行こうぜ」

 ジウは、アヤとサヨに声をかけた。

「ユキんとこ。大騒ぎになってんだろうし」


 ――ようやくこの街にも、朝が来たのだから――


「そうだな。シノも心配だしな」

 アヤが同意した。何だか泣きそうな顔で笑っていた。

「優等生の俺らが、傍にいてやんねーとな」

 ジウは無理矢理笑ってそう言った。アヤはため息混じりに笑って「そうだな」と応えた。


「ねえ。私、解った気がする」


 サヨが先に歩きだした二人の背に言った。

 ジウとアヤが振り向く。

 サヨは、両手を胸元にあてて目を伏せた。

「はじまりの時に、大地を照らす強い光……」

 まだ少しぼうっとした様子のサヨは、頬を少し赤く染めて続けた。


「『太陽』は、あなたたちのことだったんだわ」


 サヨの予想外の言葉に、ジウとアヤは顔を見合わせた。


「ふっ」

「ハハハ」

 何だかよく解らないが、笑えてきた。

 小首を傾げるサヨに、アヤが「行こう」と手を差し出した。

 ジウは、自分とアヤの間に駆けてきたサヨの顔は見ずに、歩き出した。


 俺たちが太陽だって?


「そんなワケねーじゃん」


 悪い気はしないけどな。


 青い空の下、歩き出した三人の足元には、硝子の砂粒たちの下から、小さな緑の目が芽吹いていた。

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