昔語り2
「カゴミヤ計画」とは、この街――ダーナ王国の王都を、王城を中心とした巨大な結界に閉じ込めて、外界と完全に隔離し、敵の侵入・襲撃を回避、戦争終了まで市民を安全な結界内で護るというものだ。
戦争が終了するか、状況が好転し、市民の安全が確保されるまで結界内で籠城し、安全になり次第、結界を解除する。
だが、この計画が発動してしまえば、外と中は完全に断絶され、行き来が不可能となる。
様々な問題点があるが、中でも最大の問題は、結界を解除しても良い、外は安全であると判断されるまでに、どのくらいの年月が経過するか解らないというものだった。
数日後か、あるいは何千年後か。
全く予測できなかった。
どんなに多くの問題があろうとも、私の祖国の軍が、この王都へと総攻撃を仕掛けるのは、翌日に迫っていた。
私はエトランゼを護りたいがために、祖国の軍に嘘の情報を流し、総攻撃を遅らせていたのだが、そのことが軍に知られてしまい、ダーナ王国が疲弊しきっていることを知られてしまった。
私の祖国は、裏切り者の私と、私と共に侵入していた仲間共々、ダーナ王国を滅ぼす決断をした。
もう時間がなかったんだ。
市民を護るため。
ダーナ王国の城に残された大臣と姫たちは、計画を実行する決意をした。
不完全だったが、アータ博士が造った結界魔法具「天球儀」に、エトランゼと私を繋いで、カゴミヤ計画は発動した。
「天球儀」は、人柱を犠牲にして、展開された結界を維持するための魔法具だ。
街に張られた結界……お前たちが天井と呼ぶもの……あれは、街にいた皆の魔法で張られたものだ。そしてそれを、天球儀が強化し、維持した。
結界に遮断された内部……街を、人が暮らしていける環境にして、それを維持するための装置を、アータ博士は月光塔の地下のこの部屋に、何か月も前から秘密裏に造っていた。
このカラスの椅子は、座った者の生命を代償にして、天球儀の魔法を作動させ続ける……謂わば天球儀の動力源だ。
同時に、空気の浄化・気温、湿度の管理・食糧工場の稼働・満月の光の強弱の制御など、街に生きるものたちの生命維持に必要な全ての魔法を展開する動力源ともなっている。
この部屋の四方にある装置が、その生命維持に必要な魔法を展開している。例えば、そこの柱は空気の浄化と気温・湿度の管理をしている。
私は動力源であると同時に、それぞれの制御も担っている。
そしてこの椅子の後ろの大きな柱は、私とエトランゼ……動力源の生命維持に必要な魔法を展開している。
私とエトランゼは、この塔に生かされているのだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます