第40話

「嫌いじゃないよ」



僕の第一声はそれだった。

かつぜつの悪い声で、聞き心地の悪いその声で、僕は答えたのだ。



「じゃ、どうして私の事避けるの?」



僕の手を握る彼女の手は強く、そして温もりが手から心臓へと届いた。

なんだろう、この気持ちは……

温かい。



「避けてた訳じゃないよ……

 僕は、話すのが苦手なんだ」



それに自分の声が、嫌いだ。

だからこの人が、好きとか嫌いとかそんな問題じゃないんだ。



「そう……なんだ……」



彼女は、ほっとしたような安心したようなそんな表情を見せた。



「だから、先輩の事、嫌いとかそんなんじゃないです」


「そう、よかった

 えっと、良かったら名前を教えてくれるかな?」



名前か……

名前を聞いて、僕の事を嫌いにならないかな?

化け物って事で、少し目立ってるしね。

でも、いいや。

僕は、嫌われる事に慣れっこ。

いや、慣れなくちゃいけないんだ。


僕は、静かに口を開いた。

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