13.雨の日と晴の日のメルヘン

地面一面濡れている

街一帯水浸しになる

なにか凄いことが起きている

昨日乾いていた街がすっかり濡れている


空から水が降ってくるということがある

「は? メルヘンかよ」

空から水が降ることが日常でないならそういった

空から水が降る

どこに溜め込んでいたんだというほど降る

曇って成層圏は見えない

雲はどこから来たんだというほど垂れ込めている

その縁はこの交差点からは見遥かせない


水蒸気が冷えて雲をなす

海面が蒸発して蒸気をなす

海の縁に汽水域がある

川が流れこんでいる

サケが流れに逆らって昇る

石がしだいにとがってくる

川もだんだん狭くなる

流れもどんどん急になる

緑にあたりが翳ってくる

じくじくと湧水を吐く土がある

土の表面は濡れている

昨日降った雨を呑んでいる

空はすっかり晴れている


地面一面乾いている

街一帯陽をはね返す

なにか凄いことが起きている

昨日濡れていた街がすっかり乾いている


空から水が降ってこない日がある

「は? メルヘンかよ」

空から水が降ることが日常ならそういった

空から日が射す

どこもかしこも焦がし尽くすと射してくる

雲のひとつも見えない

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