第24話 dungeon Seeker 2
……てくてくと動かないエスカレーターを歩く……ライトを消す……一気に視界が狭まるが、1階の為入り口から微かに陽光が入り完全な暗闇じゃない……僕は暗闇に目を慣らす……
お猿には酷い事をしたかも知れないが、仕方なかった。
但し、収穫があった……
ドローン2体とMemoryCard多数……
まだまだ収穫できる宝物があるかも……
僕は写真を撮り地図にpinを打つ……
また来よう……やはり大都市は宝物が多い……遠くまで来た甲斐がある。
1階を通過して……2階と思ったが……階層図をみて立ち止まる……医療品……薬関係は全滅だろうが……使える物が有るかもしれない……今の時代、医薬品は貴重であり、希少だ……
しかし液体・錠剤薬など使える訳も無く考慮外だ。
狙い目は……包帯、ガーゼ、マスク、テーピング、そういった衛生材料だ……怪我をして消毒できても患部を清潔に保てなければ化膿し治りが遅くなる、或いは更に重症になる事もある……
当然、本来の使用期限はとっくに過ぎているのだがそれでも役に立つ……割りと嵩張るので全てを持っては帰れないが、おっさん先生の病院で使う程度なら2~3ヶ月分はバックパックに放り込だと思う……これ以上は他を探索してから決めよう。
上の階で更に良いものが見付からないとは限らないからだ。
再度本来の2階へ向かう……
ようやく目が暗闇に慣れてきた……
多少だが遠方まで視界が拡がる……
フロアガイドを思い出す……
■高度管理医療機器……2階
■防災用品……4階
この2つが気になっていた……
おっさん先生の病院で役立ちそうな医療機器と発電機等の防災グッズ どちらも今のI市には有って損はない。
その2階に到着した……オーディオ関連、おっさん先生なら涎が出そうだ……しかし大半の機器は埃まみれで至る所が割れていた……割れ目に野太い毛が挟まっている……見覚えがある……先程のお猿……
猿は集団行動だったっけ?bossを中心に群れを形成するって聞いた様な、違ったかな……
雄猿は群れから自立して単独行動の期間があるとも言っていた様な……
結局、全部おっさん先生の受け売りだけど……
群れがここに居るなら……
この毛が地下のお猿の毛で無いなら……
別の猿が複数居るなら……
あんなのに集団で襲い掛けられたら……
考えたくない……恐怖……
しかし、多分ここには猿の集団が居ると……
最悪の状況を想定する。
オーディオ機器のピアノブラックだった天板に二種類の大きさの足跡が在るからだ……
明らかに大きさが違う……
もうしかしたら1体でも前肢と後足でサイズが違うから……と考えられなくも無いがそんな楽観視はしない……
猿の多くは生態的に集団で行動していおり、ここに複数の猿が居ると考える方が蓋然性が高いだろう。
オーディオ機器の破損状況が単独行動で行われたにしては広範囲に破壊されている事も一因だ。
……気を引き締める……拳を握る……
大型量販店なんて、遮蔽物だらけ……死角だらけだから、角を曲がれば直ぐにお猿なんて状況が考えられる……
だが、猿はどこから来たのか、この辺りに動物園でも在ったのだろうか?
そして、お宝への期待が薄れる……コイツらにバラバラにされてそう……多分……
エスカレーター周囲を調べ終わり、目的の高度管理医療機器のコーナーへ向かうが、視界に見える景色から失望が膨らむ。
……あぁ……これは……
目の前にマッサージチェアがデンと鎮座している。
おっさん先生の居間にも置いてあるヤツ。
電気が勿体無いから、只の椅子に成り果てているが……
他にも、ベルトコンベアの上で走る、自分が二十日鼠にでも成ったかの様な健康器具……
……高度管理医療機器ね……そうか……まぁ、これも医療機器と言えなくも無い。
一寸、がっかり。
しかし、よく考えてみて、真に医療用の精密機器が大型量販店に展示しているとは考えにくい。
……そして、持って帰れないだろう……もう少し考えろ僕……
回れ右をして、エスカレータに戻る。
戻る道中にも、明らかに牙や爪で破損した商品箱や、商品が道脇に散乱している。
少し、早足になる……仄かな恐怖……多量の猿に囲まれて齧られ、引っ掻かれる……
首筋にチリチリとした怖気。
4階を目指し、エスカレータを歩く。
4階は防災用品のエリア、こちらはまだ期待できそう。
エスカレータの踏面に落ちたガラス片を僕が踏んでカチャ……パキッ……と音を立てる。
その度に周囲を警戒してしまう。
4階に上がった……暗いが、ここもやはり猿の被害が観える。
至る所に、引っ掻き、噛みちぎり、足跡、無数の痕跡。
だが、耳を凝らしても鳴き声の類いも聞こえない……この階には居ないのだろうか?
しかし、よく聞くと何かしらの落下音や擦過音が聞こえる……お猿もしくは『ヤツら』だろう。
慎重に周囲を見回し、写真を撮りながら防災用品のコーナーへ向かう。
・防災リュック(所謂、非常持ち出し袋)
・懐中電灯(ラジオ受信機能有)
・ミネラルウォーター(猿に齧られたりで散々)
・マルチツール(僕のガーバーを越える物無し)
・非常食(こちらも齧られ、破られ)
・点火機器(ファイアースターター、マッチ、ライター等)
・救急セット(これもボロボロ)
・銀マット(嵩張らず、保温効果高)
取り敢えず、お猿に破壊されていない銀マットを2つとファイアースターターを数個そしてダイナモ式の懐中電灯を1個バックパックに仕舞う。
野宿用に持っておこう。
予想はしてたが、物品の多くは30年の経過により劣化し破損していた。
しかし地味だが収穫はあったし、収穫が無いという結果も収穫だ、次からはココは調べなくて良いという事。
さあ、どうする更に上階に上がるか、もう目新しい物も無さそうだし、諦めてココを出るか……
どうする?
敏捷性に富む猿は今までの『ヤツら』と比較しても明らかに難敵だ、一匹でも接近を許していた。
僕の技量では容易に噛まれる可能性があった。
雑菌だらけの牙や爪で傷つけられたら、治療を受けるに日時を要するこの荒地にあっては、簡単に致命傷に成りかねない。
もし万が一、複数の猿に囲まれて一斉に襲い掛かられたら……身体の多くをプロテクターで覆った今の僕でも怪我を負う可能性が高い。
これがノロマな『ヤツら』ならば、撒く事も可能なんだが……
ただ、5・6階を探索すればほぼ目的を達成できる。次回また周辺を探索するにしても、この上階だけ残しておくのは効率が良いとはいえなかった。
決心して5階へのエスカレーターを歩く……エスカレーターには相変わらず様々な商品や棚の部品が落ちて歩き難い……そして気に障る音を立てる。
「カチャ……パキパキ……」成るべく音を立てないように進むが限度がある。
完全には音を消せない。
……とその時、僕が音を立てていないタイミングで、「ガチャン……」と音がする。
『あぁ、居る……』思う……
警戒する……『ヤツら』ならまだマシ……
右手で鉈を握る……
空いた手で無意識に首のジャケットのチャックを再度引き上げる……
ほんの少しだけ、チャックが上がる。
首を圧迫するプロテクターの安心感にビビる気持ちが少し落ち着く……
本当にほんの少しだけ……
手に汗をかく……
出来る事なら、戦闘無しに逃げ切りたい……
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