卒業を目指す高専生が、試行錯誤を繰り返して月を目指す物語。
月の砂漠でウサギを飼う。そんなSF小説として最高にユニークなテーマを、リアルなディテールと緻密に計算された背景で飾り立てている。
しかし、SF書きとして書き込みたくなる世界情勢とか未来科学技術とか、そう言う小難しいことは前に出てこない。青春してる女子高専生の一人にスポットを当てる展開、ほんと、羨ましくなるくらいストーリー展開の巧さが光ってる。
一瞬だって無駄がない物語を追っているうちに、あっという間に自分もその場に巻き込まれる感覚を楽しめる良質なSF小説です。読もう、月でウサギを。
まだぜんぜん完結していないですが、前作「アリス・エデュケーション」が面白かったので、今回もきっとうまくまとめてくれるだろうと期待します。
論文をさぼっていた学生たち、退学の危機を乗り越えるための大逆転を狙い、狙いを月に定めます。舞台は近未来、月面に日本が基地を作っている時代なのです。
基地といっても、荷物1回送るだけで数十億円かかり、たった数人が暮らすだけの窮屈な場所です。そんな場所を、学生の知恵と努力で帰ることができるか……??
あと50年以内には、いいや、カネさえあれば10年でできそうな、現実的技術をきっちり積み上げる、超堅実SFです。