第238話 魔神の配下
結局、由良が気絶して騒ぎとなったため家臣達から説教を受ける事になってしまったが、朧の証言で信濃が悪いと結論が出たため、清宏がもう一度信濃に拳骨を喰らわせる事で事なきを得た。
家臣達も由良の許し無く処罰する訳にもいかず、始めはどうするかで揉めていたのだが、面倒臭くなった清宏の放った強烈な拳骨で信濃が気絶したのを見て、満場一致で手打ちする事になったのだ・・・たった一撃で魔王を気絶させる様な相手とは揉めたく無いと言う結論に至ったようだ。
由良と信濃が目覚めるのを待った清宏は、最後にもう一度決定した事を再確認し、信濃が呼んだ火車に乗り込み都を発った。
その後、都を出発して1時間以上が経過し、車内では、信濃が清宏からのネチネチとした説教を聞かされ続けている。
「本当、話が流れなくて良かったわ・・・」
「はい・・・」
「お前も魔王なら、自分の軽はずみな行動がどう言う結果をもたらすか考えるべきなんじゃねーの?
今回は朧も助け舟を出してくれたし、俺が拳骨喰らわせただけで済んだから良かったようなものの、もし違う結果になってたらどうすんだ?」
「はい・・・今回は、全面的にウチが悪かったと思っとるわ」
「いくら同盟組んだと言っても、俺達は無謀に付き合う気はさらさら無いからな?自分の所はお前が責任持って守らなきゃならん・・・俺達は支援に徹するって事を忘れるなよ?
良いか、お前が協力してくれる限り俺達は裏切らないが、お前自身に自覚とやる気が無いと見れば容赦なく支援を打ち切る・・・それがどんな結果をもたらすかはお前自身が良く考えろ」
「頼りきりにはならんようにするわ・・・おんぶに抱っこってのも悪いしやな」
信濃が反省しているのを確認した清宏は、隣に座っているアルトリウスを見る。
「で、調べ物はどうだった?」
「そちらに関しましては、私よりも信濃に聞いた方がよろしいかと・・・」
「だとさ・・・で、結局何を調べてたんだ?」
話を振られた信濃は、袖の内側から書類の束を取り出して清宏に差し出した。
「それは、魔神様についての資料の写しや・・・この国は自分等の所に比べて遺跡や伝承なんかが色々と見つかっとってな、それを調査した結果なんかが書かれとる。
ウチも前々から気になっとったし、自分等も知りたい事があるんちゃうかと思って書庫を調べさせて貰っとったんや」
「そうか、感謝する・・・俺も神や勇者について調べたいと思ってたから助かる。
正直、うちはイレギュラー要素が豊富だから、勇者が現れる法則のきっかけだけでも掴めたら万々歳だからな」
清宏が書類に目を通しながら話していると、信濃は渋い顔をした。
「すまんのやけど、勇者に関しては新しい情報は得られんかったわ・・・」
「そうか・・・確か勇者の現れる条件は、世界の理に影響を及ぼす存在が現れた時って感じだったよな?そもそも、この世界の理って何なんだ?」
「それはウチにもさっぱりや・・・世界滅ぼせる程の力を持っとるガングートが居っても現れんくらいやから、他に何か条件があるんやろなぁ」
「そこさえ解ればなぁ・・・おっ、魔神の配下についても書かれてるんだな」
苦笑しながら書類を捲っていた清宏が手を止め、書かれている情報に目を通す。
そこには、魔神が従えていた配下達の情報の一部が記載されていた。
「魔神様は、各属性それぞれの配下を従えとったみたいやね・・・恐らく、それぞれの属性の最上位種なんやろなぁ」
「そりゃそうだろうな・・・何々?それぞれの属性の奴はっと・・・」
書類にはこう書かれている。
地・・・ベヒーモス
水・・・リヴァイアサン
火・・・スルト
風・・・パズズ
氷・・・フェンリル
雷・・・バエル
6属性しか書かれていないところを見ると、闇が魔神本人であり、光に属するのが神なのであろう。
見慣れた名前が並んでいる事に気付いた清宏は、乾いた笑いを漏らしながら書類を畳む。
「俺の居た世界の魔神や魔獣のオンパレードじゃねーか・・・何なの?繋がりあるの?」
「知らんがな・・・ウチかて魔神様の配下の名前知ったんは今日が初めてや」
「てかさ、リヴァイアサンとフェンリルって今までにも何度か現れてるよな?神と魔神の戦いで死んでなかったのかね?」
「それについてもいくつか書いとったから、写せるだけ写しといたで?」
「あらやだ有能!」
「ウチかてやれば出来んねん!」
信濃は褒められて胸を張り、清宏はそれを無視してもう一度書類を捲る。
「あぁ、そう言う事ね・・・」
「何と書かれているのです?」
清宏は書類の内容に納得して頷くと、隣で覗き込むアルトリウスに書類を渡して腕を組んだ。
「魔神の配下の中でも特に厄介なのから殺したは良いが、先に力を使い過ぎて他のは封印か格落ちさせるのが精一杯だったようだな・・・だからたまに進化する輩が現れるって事だろ。
だが、だとすると何故進化した奴の時には勇者が現れないんだ・・・格落ちしたとは言え、元は憎き魔神の配下だろ?」
「もしかするとやで、ウチが思うに実際は魔神様も封印しか出来ひんかったから、殺したっちゅー事にして信者を利用して証拠隠滅・・・んでもって、勇者が現れるんは魔神様の生まれ変わりが現れた時だけって設定やったりしてな!他のは格落ちやから人間に任せて、自分は魔神様の生まれ変わりの為に力温存しとるっちゅう感じやないか!?」
「おお!勇者になった人間は性格が変わるって聞いたが、それは神が乗り移ったからって考えれば一応辻褄が合うな!!
どしたん信濃ちゃん、拳骨喰らってから頭キレッキレじゃない!?」
「はっはっは!ウチかてこのくらい考えつくんや!もっと褒めても良えんやで!!」
清宏と信濃がハグをして喜んでいると、それを見ていたアルトリウスが外を指差す・・・話し込んでいる間に、いつの間にか城のすぐ近くまで来ていたようだ。
城の上空まで来た火車は、ゆっくりと降下し庭に降り立つ。
「よし、それじゃあ俺はこの資料を基に色々と調べてみるわ!お前も何か分かったら、こっちに来る時にでもまた教えてくれ!!」
「了解や!んじゃ、今からお土産用意するから待っとってな!!」
2人は固く握手を交わし、信濃は城の中に走って行く。
残された清宏とアルトリウスは、信濃の配下の案内でメジェド達の元へ向かった。
「ただいま戻りましたよー」
「オカエリナサイ、ゴ飯ニスル?オ風呂ニスル?ソレトモ・・・ワ・タ・シ?」
「お土産を取りに行った信濃が戻って来たら帰りますよ?」
「ノリガ悪イ・・・放置プレイハ趣味デハナイ」
腰にエプロンを付けて出迎えたメジェド達を見た清宏が面倒臭そうに答えると、メジェド達は寂しそうに肩を竦めてエプロンを取る。
「良い子にしてました?」
「無論ダ」
「へえ・・・後ろで倒れてる鞍馬が白烏になってるのはどう言う事です?」
「イメチェン」
「なら仕方ない・・・だが、俺は騙されぬわ❤︎」
清宏は放心状態の鞍馬を起こしてポーションを飲ませると、笑顔でメジェド達を振り返る・・・だが、そのこめかみには青筋が立っているため、明らかに怒っているようだ。
それに気付いたメジェド達は、素早くアルトリウスの背後に隠れる。
「スマヌ・・・」
「俺じゃなくて鞍馬に謝ってください」
メジェド達は大人しく清宏に従い、鞍馬に頭を下げる。
「まったく・・・大人しく出来ないんですか?」
「暇ヲ持テ余シタ神々ノ遊ビガヒートアップシタノダ」
「用意出来たでー・・・って、鞍馬!?自分、こんな白くなってもうて・・・気分転換するにも程があんで!?」
メジェドが言い訳をしていると、戻って来た信濃が鞍馬を見て駆け寄り声を掛ける。
清宏がため息をつくと、メジェドが嬉しそうに信濃の肩に手を置いて胸を張った。
「ナカーマ」
「えっ・・・何が?」
「同じ感性を持ってるってよ・・・」
「意味が分からへん・・・」
「取り敢えず、疲れたから帰るわ・・・またな」
「お、おぉ・・・今日は助かったわ」
清宏は信濃から土産の品を受け取り、メジェドの頭に手を置く・・・メジェドは一瞬『えっ!?』という顔をしたが、大人しく出来なかった手前受け入れる他なかった。
「じゃあまたな・・・」
「し、しっかり休むんやで?」
「デハ、サラダバー」
信濃が手を振ると、清宏達は一瞬で姿を消した。
残された信濃は、まだ放心状態の鞍馬を他の配下達に任せて風呂に向かって歩き出した。
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