第198話 白い水着+水=???
渡された水着に対してルミネが30分程ごね続け、根負けした清宏は結局別の水着を渡す事で彼女を納得させる事が出来た・・・ただ、彼女が着替えに向かう際、清宏はいやらしい笑みを浮かべていたため、まだ何か企んでいるようだ。
それから5分程経ち、更衣室から戻って来たルミネは先程まで着ていた水着の入った袋を清宏に渡した。
「まったく・・・こういう水着で良いんです」
「へいへい・・・あぁ、そう言えばお前ってファンクラブがあるんだったよな?」
「それが何か?」
「いやな・・・さっきまで着てたこの水着、高値で買う奴がいるかもなと思ってな」
「やめてください!何だって貴方はそう下卑た事を考えるのですか!?」
「冗談だ冗談!こんなところで魔法使われたら敵わんわまったく・・・。
さて、そんじゃまあ組分けするぞー」
清宏はルミネが構えるのを見て慌ててそれを止めると、ルミネ達3人を見て腕を組んだ。
「私は貴方とは嫌ですわよ・・・これ以上貴方の好きにさせるものですか」
「我輩はどうでも良いであるぞ?なんなら、ルミネと組んでも良いのである」
しばらく考えていた清宏は、真面目な表情で首を振った。
「いや、お前はベルガモットと組んでくれ。お前が真面目にやるか不安ではあるんだが、もし危ない魔物と遭遇した時、俺やルミネでは彼女を守る余裕があるか分からないからな・・・彼女は俺の友人からの預かり物だから、万が一があってはならない。
ルミネ、お前には悪いが納得してくれ・・・それに、俺は索敵は出来んから出来そうなお前達が固まったら手間が掛かる」
「はぁ・・・そう言われたら仕方ないですわね。ここは観光地ですから安全は確保されていますが、それも確実と言える訳ではありませんもの・・・良いですわ、それで行きましょう」
ルミネが渋々納得し、清宏達は二手に別れてそれぞれ反対方向に歩き出し、浜の先にある岩場に向かう。
二手に別れる際、清宏はベルガモットに光の魔石がはめ込まれた円筒形の魔道具を渡していた。それはハンディタイプの魔石灯で、もし何かあった時にはそれを照らして報せる為だ。
清宏とルミネは浜を歩いている間、何度となく行く手を遮られてしまう・・・事あるごとにルミネがナンパされるのだ。
ただ、流石にナンパには慣れているのか、ルミネは話しかけてくる男達を難なくあしらっている。
「申し訳ありませんが、まずは私と同じS級になってからいらっしゃってください」
鉄壁の営業スマイルで次々と男達をあしらうルミネは、持って来ていたギルドの階級章をチラつかせる。
その一部始終を離れて見ていた清宏は、男が去って行くのを待つと、ルミネに近づいて感心したように階級章を眺め、拝みだした。
「黄門様の紋所かよ・・・凄え効果だな」
「清宏さん・・・貴方も離れて見ているだけではなく、助けていだだけません?貴方に睨まれたら、大抵の男は逃げて行くと思いますわよ?」
「目付きか?目付きの事言ってんのか?お前、そんな言うんだったら、とっておき喰らわすぞ」
清宏が眉間にしわを寄せ、水鉄砲を取り出したのを見たルミネは鼻で笑った。
「何かと思えば水鉄砲ですの?そんな物がとっておきだなんて、まさか私を舐めてらっしゃるのですか?」
「良い度胸だ・・・ならば喰らえ!スケスケビーム!!」
水着ならば濡れても問題無いと判断したルミネは、予知を発動する素振りも見せず清宏の攻撃を避けもせず受け止めた・・・その瞬間、それを遠巻きに見ていた周囲の男達が、またもや股間を押さえて中腰になった。
ルミネはそれに気付きもせず、清宏に対して勝ち誇った笑みを向けている。
「ふっふっふ・・・そんな堂々としていて良いのか?」
「・・・何がですの?」
不敵に笑った清宏が再度水を掛けると、ルミネは自身の胸元を見て動きを止めた・・・彼女が着ていた白い水着は水を吸い、豊かな胸の先端にあるピンク色の突起が薄らと透けていたのだ。
「思い知ったか、俺を馬鹿にした報いだ!!」
「あ・・・貴方・・・最っ低ですわ!!私、もうお嫁に行けません!!!」
脱兎の如く走り出したルミネは、胸を隠しながら岩場の陰に隠れた。
「さてと、気が済んだし俺も行くか」
清宏が水鉄砲を収納して歩き出すと、周りの男達から大歓声が巻き起こる。
「凄えぜあんた!!」
「兄ちゃんナイス!」
「ありがとうございます!ありがとうございます!!」
「俺、今日の事は一生忘れない・・・」
声援を受けた清宏は、親指を立て満面の笑みを浮かべて男達を見る。
男達もそれに応えて親指を立てると、清宏と頷き合って見送った。
「さーてと、ルミネはどこまで走って行ったのかね・・・」
清宏は滑る岩場を慎重に進みながらルミネを捜すが、なかなか見つからない・・・既に岩場の端が見えてきているのだが、ルミネはおろか人っ子ひとり見当たらない。
時間が経つにつれ清宏は自分のした事を申し訳なく思い、もう一度最初から必死にルミネを捜し、やっとのことで岩場の穴にしゃがんで泣いている彼女を見つけ出した。
清宏はゆっくりと近付き、ルミネに語りかける。
「あの・・・やり過ぎたよ。ごめん・・・」
「・・・来ないでください」
「了解・・・まぁ、落ち着いたら声を掛けてくれ。捜索の方は俺がやっとく・・・」
清宏は新しい水着とタオルを取り出してルミネの前に置くと、その場を去って行く。
ルミネはもそもそと穴の中から出てくると、清宏が置いて行った水着とタオルを回収し、穴の中に戻って着替え始めた。
「ラフタリアと代わったのは良いですが、会談までの間本当にやっていけるのでしょうか・・・」
ルミネは鼻をすすり、先行き不安になりボソリと呟く。
不安を拭い去る様に首を振った彼女は、身体にタオルを巻き付けたまま濡れた水着を脱ぎ、新しい水着を取ろうと手を伸ばして視線を上げる。そして、何者かと目が合い顔を引きつらせた・・・彼女の視線の先では、岩の陰から人の頭大の魚の頭が、縦に3つ並んだ状態で着替えを覗いていたのだ。
それを見た彼女の表情は一瞬青ざめ、そして徐々に真っ赤になって胸一杯に空気を吸い込んだ。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?き、清宏さん、な・・・何か居ますわあぁぁぁぁぁぁ!!!」
空気を震わせる程の絶叫で清宏を呼んだルミネは、近くにあった石を手当たり次第に巨大な魚の頭目掛けて力一杯投げ付ける。
彼女は見事なエイムを見せ、投げた石が吸い込まれるように3つの頭にヒットする。
『ぎょぎょっ!?』
石を喰らった魚達は悲鳴を上げ、その場でビチビチと跳ねながらのたうち回っている。
魚達が悶えているのを確認したルミネは素早く新しい水着を着ると、周囲を見渡して胸を撫で下ろした・・・清宏が走ってくるのが見えたからだ。
「清宏さん、ここですわ!!」
「大丈夫か!何があったんだ!?」
「私は何とか無事ですが、あれを・・・」
ルミネが無事である事に安堵した清宏は、彼女が指差した物を見て目を丸くした・・・先程覗いていた魚達の首から下は、筋骨隆々の人間の様な身体になっていたのだ。
清宏はゆっくりとルミネを振り返り、震える声で尋ねた。
「なあ、これって何かな・・・半魚人?」
「私に聞かれても困りますわ・・・だって、私の知る半魚人とは大分違いますから」
「マジで?やっぱ海って広いな・・・」
「ですわね・・・取り敢えず、この方達が落ち着くのを待って見ましょう」
2人は、いまだにのたうち回っている不思議な生物を見下ろしたまま待つ事になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます