第128話 砂漠越え
「いやー・・・今日は何とか問題も無く陛下に会えて良かったわね!まぁ、昨日の今日だったからかなり驚かれたけどさ」
「我輩の力を持ってすれば、2日連続で王都に向かうなど容易い事なのである!
それにしても、あの王はなかなか話のわかる男であるな、快く受け入れて貰えたのは助かったのである!」
ラフタリアとペインは、リリスからの手紙を王都に届け終え、今は自分達の用事を済ませるため東に向かって飛んでいる。
まずは砂漠を越え、ペインの目的地であるヴェスタルの墓へと向かうようだ。
「うまく話が進んだのは良いけど、清宏にこれを渡しとけば良かったわ・・・」
ラフタリアは、伝達用に飼育している鷹の魔物を操る為の魔道具を見つめながら渋い顔をした。
2つ1組のその魔道具はそれぞれを別の者が所持しておく事で、距離があろうとも鷹の魔物は正確な位置を把握し、連絡を取り合う事が出来る。
自身の魔道具を清宏に渡しておけば、馬よりも早く報せる事が出来たのだが、出発前に喧嘩をしていたラフタリアは、その存在をすっかり忘れて出て来てしまったのだ。
「時間はまだあるのだし、慌てる必要は無いのではないか?それに、馬で報せるよりも我輩達の用事を済ませて帰る方が確実に早いのである」
「それもそうね・・・清宏もすぐに報せろとは言ってなかったしね!」
「うむ!こちらは大した準備も必要無いのであるし、数日など誤差の範囲なのである!!」
2人は高らかに笑い、ペインは速度を上げたが、すぐにペースが落ちて行った。
背に乗っていたラフタリアも次第に不安そうな表情になっていく。
「ペイン、念の為に清宏に怒られないように手回しをしておいた方が良いかもね・・・」
「確かにそれが良さそうであるな・・・だが、どうするのである?何か妙案でもあるのであるか?」
「ええ、今回の会談の仲介をオズウェルト商会ってところの代表に依頼するんだけど、城に帰る前に代表の予定なんかを聞いて帰ったらどうかしら?
清宏は私達の報告を受けてから報せに行くつもりだろうし、その手間を省いてあげれば怒られる事はないんじゃないかしら!」
「おお!それは妙案であるな!!」
「でしょう!?今日の私は冴えてるわ!そうと決まれば早く用事を済ませるわよ!!」
2人は気を取り直し、再び速度を上げて東の空へ飛んで行った。
先に用事を済ませるよりも城に報告に戻った方が早いのだが、ツッコミ不在の状況では2人が気付く事などあるはずもなかった。
「でさ、これからどうすんの?砂漠の前で休むの?」
「いや、この際限界に挑戦するのである!目指すは今日中に砂漠越えである!!」
「おぉ、なんか漲ってるわね・・・でも、あんたの食費が馬鹿にならないから程々にね!」
「ふっふっふ・・・案ずるな!我輩はやれば出来る子なのである!常に挑戦し続けるのである!!」
「カ、カッコいいじゃない・・・あんたの事、ちょっと見直したわ!」
「ふっ・・・貴様、今頃気付いたのであるか?」
ラフタリアに煽てられたペインは不敵に笑い、眼前に広がる砂漠を見て深呼吸をすると、一気に加速し、あっという間に空の彼方へと消えてしまった。
「流石に飽きてきたわねー・・・」
2人が昼前に王都を出発してから3時間程が経ち、陽が傾き空が茜色に染まり始めていた。
その間、ペインは休まず飛び続けているが、辺りは見渡す限りの砂ばかりで代りばえせず、徐々に2人の会話は少なくなっていた。
飽きっぽい性格のラフタリアは、我慢出来ずに愚痴をこぼしたが、それを聞いたペインがジロリと睨み付けた。
「貴様は我輩に乗って喋っていただけではないか!我輩の方が遥かに疲れているのである!!」
「ただ乗って喋ってるだけってのも案外辛いのよ・・・で、後どれくらいで砂漠を抜けるの?」
ラフタリアは、欠伸を噛み殺してペインに尋ねる。
「貴様も清宏に負けず劣らず図太い性格をしているのである・・・。
どれどれ、確かさっきのオアシスが最後のはずであるから・・・うむ、あと少しで砂漠を抜けるのである!!」
ペインの言葉を聞いて、ラフタリアは腕を組んで唸った。
「確か、砂漠を抜けたら街があるわよね・・・ペイン、一度手前で降りて徒歩で街に入るわよ」
「何故であるか?」
「ここは中立地帯になってるから良いけど、砂漠を抜けたら国が違うからよ・・・面倒ごとに巻き込まれた時に、不法入国したなんてバレたら更に話がややこしくなるでしょ?
短期の滞在であれば、関所で入国税を支払って許可証を貰えば良いだけだから、小さな事だけどちゃんとしといた方が良いのよ」
「ふむ、貴様の言う通りであるな・・・ラフタリアよ、我輩は人族の世事には疎いのである。街中では貴様に合わせよう」
「了解!目的地まではまだあるし、今日はその街で休んで、明日は食料を調達してから出発しましょう!!」
「心得たのである!おっ、そろそろ抜けるのであるぞ!」
ペインが地平線の向こうを指差すと、微かに街の灯りがともっているのが見える。
「正面から離れた場所に降りてちょうだい・・・ちょっと位距離があっても、このくらいの時間なら、冷え込む前には街に入れると思うわ!」
「我輩、寒いのは苦手であるからな、その方が助かるのである・・・」
ペインは身震いして頷くと、ラフタリアに指定された場所に降り、清宏に貰った服に着替えて関所に向かってラフタリアと共に歩き出した。
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