第114話 新しい朝が来た
一夜明け、リリス城改め風雲リリス城の再開の日が訪れた。
昨夜は早めに休んだため、皆いつもより早い時間に起きて朝食の準備などを行なっている。
ローエンとグレンは、ペインと共に夜明け前から狩に出かけているためこの場には居ないが、朝食前には戻って来ると言って出たので、そろそろ帰ってくるはずだ。
清宏はと言うと、目の下にくっきりとクマが出来ており、明らかに疲れきっている。
理由は簡単だ・・・清宏は、昨夜皆が寝静まった後、明け方までペインに運ばせる乗り物の設計を行なっていたのだ。
清宏は、城の改装中も寝ずに設計などで働いていたため、ここ数日間徹夜している状況だ。
「ははは・・・朝日が眩しいぜ」
「ソウデスネ・・・」
「おう、おはようさん・・・その調子じゃあ、ゆっくり寝られなかったみたいだな」
清宏が窓を開け、朝の新鮮な空気を胸一杯に吸い込んで身体を伸ばしていると、寝室からフラフラと歩いて来たリリスが、窓の縁にのし掛かる様に倒れ込んだ。
リリスの目の下にも、清宏同様クマが出来ているようだ。
「当然じゃ・・・結局、朝までシスの抱き枕じゃ」
「魔王を抱き枕にする人間てスゲーよな・・・まぁ、これでしばらくは静かになるだろ。
幼女成分をたっぷりと補給したからな!!」
「他人事じゃと思ってからに・・・それより、お主も寝ておらんのではないか?」
「仕方ねーって、ペインに運ばせる乗り物は早めに用意しときたいからな。
それさえ出来れば、クリスさんに用事がある時もすぐに会いに行けるし、この国が俺達の提案を受け入れてくれれば、王様御一行を迎えにだって行かせられる。
王様がペインを気に入れば、外遊に同行させたりとか色々と恩を売れるからな」
清宏が欠伸をしながら答えると、リリスは呆れて笑った。
「向こうにとっても、覇竜が同行するとなれば心強いじゃろうな・・・じゃが、あいつはちと悪ノリが過ぎるからのう」
「ボディーガードとしては申し分無いんだ。
飯さえ食わせときゃ言う事聞くし安いもんだろ?
他国には、こっちの戦力を見せびらかして牽制も出来るし丁度良いさ。
戦争になった時に、あんなのが戦闘に参加するって考えたら誰だって尻込みしちまうからな」
「まぁ、それもこれも向こうの出方次第じゃがな・・・さて、オーリック達はどうなったかのう?
吉と出るか凶と出るか・・・出来れば、早いとこ状況を知りたいもんじゃな」
リリスが苦笑すると、清宏は何かを思い付いたように手を叩いた。
「知りたいなら、聞きに行けば良いんじゃね?
遊ばせとくのも何だし、ペインとラフタリアに行かせてみるか?
俺としては、ペインが王都までどの位で行けるのか知っておきたいしな。
まぁ、ぶっちゃけオーリック達が心配だってのもあるんだよな・・・。
人間からすれば、俺達は敵だ・・・そんな俺達に肩入れしたあいつらに、正直何事も無いなんて考えられないんだよ。
もし何か起きているなら助けてやりたいって思うんだが、お前はどうだ?」
清宏の提案に、リリスは腕を組んで唸る。
「うーむ・・・妾としてもそうしてやりたいのは山々じゃが、あの2人で大丈夫かのう?
あの2人が駄目と言う訳ではないぞ?ラフタリアは王都に詳しいじゃろうし、何よりオーリック達の仲間じゃから行かぬ訳にはいかん。
ペインも、短時間で王都に向かうためには必要じゃ・・・じゃが、この2人だけでは問題を起こしそうでなぁ」
ラフタリアはせっかちで騒がしく、ペインは大人しくしている姿が想像出来ない・・・誰かお目付役が必要だろう。
清宏は小さく唸り、広間に居る面々を見渡した。
「アルトリウスは駄目だな、絶対に目立っちまう・・・しかも悪い意味で有名だから、攻めて来たと勘違いされたら困るからな。
アンネも駄目だろうなぁ、見た目が良いから絡まれそうってのもあるが、何より2人を止められるような性格じゃあない・・・絶対に2人に流されて泣き出す未来しか見えない。
ここはリリに頼むか?あいつなら見た目は人間と変わらないし、美人だが性格はしっかりしてる。
リリならあの2人相手でも物怖じしないだろう。
それに、たまにはあいつにも外の空気を吸って息抜きさせてやりたいからな」
「ローエン達では駄目なのか?」
「お前は、格上の冒険者と覇竜相手にあいつらが身体を張って何か言えると思うか?
リリならお前に召喚されてるから何かあっても死にゃあしないし、最悪冒険者にバレたりした時には、指輪を外してその辺の男どもを魅了しちまえば良いだろ?
サキュバスの魅了は強力で厄介だから、冒険者だろうが大抵の男は無効化出来るだろう」
「ふむ、お主がそれで良いなら妾も構わん。
まぁ、確かにあの2人相手じゃとローエン達には酷じゃろうしな・・・」
「皆さーん、朝食の準備が出来ましたよー!」
清宏とリリスの話が纏まるのを見計らったかのように、厨房からアンネが顔を覗かせる。
丁度ローエン達も帰ってきたらしく、満足気なペインが鹿を肩に担いで広間に入って来た。
「よし、それじゃあ朝飯にしますか!」
清宏は両手で頬を叩くと、急いでテーブルなどの準備を手伝い、新たな罠や仕掛けでどうやって侵入者で遊ぼうかと思い、心躍らせながら朝食を食べ始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます