第27話隠さない系女子
シスがリリスを揉みくちゃにしている間、清宏はレイスとアンネを交え、レティに罠の製作、管理に関する決め事や、手書きの地図での問題を交えた話し合いをしていた。
レティは、清宏が思っていた以上に物分かりが良く、罠に関する知識や応用に関してはレイス達よりも優れている。
「お前凄いな、俺の罠に気づくだけあって、考え方が似てる・・・非常に遺憾だ」
「えへへ、そうですか?」
「言っとくけど、褒めてるんじゃないからな?俺とお前の思考が似てるのがショックなんだからな?」
清宏は、嬉しそうに身体をくねらせているレティをジト目で睨んでいる。
「レティ様は凄いです・・・」
(私も驚きました・・・何かコツでもあるのですか?)
アンネとレイスは、問題に対するレティの回答を見て感心している。
「え、コツですか?私の場合はコツと言うよりも、どんな仕掛けだったら気持ち良くなれるかなって考えてます!
やっぱり、掛かるなら気持ち良く掛かりたいですから!!」
レティは両拳を握りしめ、鼻息荒く宣言している。
「私には何百年掛けても到底辿り着けない境地です・・・」
(同感です・・・)
アンネとレイスは、感心から一転して呆れている。
「まぁ、罠は一辺倒じゃつまらんからな・・・アンネは性格のせいかまだ遠慮があるし、レイスは俺の指示を守ってはいるが応用が苦手だ。
だが、全てが俺の仕掛けた罠みたいになったら誰も来なくなっちまうだろ?
自分で言うのもなんだが、トラップマスターの罠を回避するなんて無理ゲーだからな・・・。
俺は凝り性な性格だから、手を抜くのは苦手なんだよ・・・だから、お前達はそれで良いよ。
俺は今後、ヤバそうな奴等や大掛かりな仕掛けに専念しようと思っている。
今後は、基本はレティを中心に3人でやって貰う。
まぁ、俺も日に何回かは憂さ晴らしであそばせて貰うつもりだよ」
清宏はそう言って笑う。
「大掛かりな仕掛け・・・今から試して貰うのが楽しみです!」
レティは嬉しそうにはしゃいでいる。
清宏とアンネはそれを見て呆れてため息をついた。
「まぁ、せっかくだし試作品を一つ試してみるか?」
「良いんですか!?」
レティは歓喜している。
「あぁ、身体も結構楽になったし、試験くらいなら大丈夫だろう」
「身体がどうかしたんですか?」
「あぁ、スキルの使い過ぎでガタが来たんだよ。
まぁ、だいぶ楽になったから問題ない」
心配そうに聞き返したレティに、清宏は笑って頷いた。
「ちょっと待ってろよ・・・よし、これでOKだな」
清宏はアイテムボックスから人間の3倍近くはある大きな樽と、刃付けのされていない剣を取り出した。
樽の上面には、人がすっぽりと入ってしまう程の穴が開いていて、側面にも剣と同じ幅の穴が大量に開いているようだ。
「何ですこれ?」
レティは首を傾げて清宏に尋ねた。
シスとリリスも大樽に気付いて近寄ってきている。
「これはな、俺のいたところにあった玩具をヒントに製作した物だ・・・その名も、黒◯危機一髪!!もとい・・・侵入者危機一髪だ!!
これは、パーティでやるタイプの物だ。
皆で協力し、クリアしなければいけない」
「なんなんじゃその安直なネーミングは・・・」
リリスは呆れて呟いた。
抵抗する気すら失せたのか、リリスはシスに抱き抱えられている。
「ネーミングについては俺は知らん・・・レティ、上に開いてる穴に入ってくれ」
清宏が指示を出すと、レティは嬉々として樽をよじ登り、穴に収まった。
すると、レティが穴に入った途端、レティは高速で回転し始めた。
「うおおおお!?な、なんじゃこりゃーーーーっ!!」
「ちょっと早過ぎたか・・・少し調整が必要だな」
清宏はそれを見て小さく呟いた。
冗談抜きで試験運用だったようだ。
「目・・・目が回りました・・・うぷっ!」
回転が止まり、レティはグッタリとしている。
「さてと、皆んなそこの模造刀を持ってくれ」
「どうするのですか?」
皆が模造刀を手に持つと、アンネが清宏に尋ねた。
「樽の横に穴が開いてるだろ?そこに刺すだけだよ」
アンネに答えると、清宏はおもむろに剣を突き刺した。
「はうっ!?刺さってないけど、このスリルが堪らない・・・」
レティは涎を垂らしながら笑っている。
「幸せそうだし、どんどんやっちゃって・・・」
清宏に促され、皆不安そうに剣を突き刺していく。
レティは剣が刺さるたびに悶えている。
「穴の数も減って来たしそろそろかな・・・」
3巡目に入り、穴の数が少なくなってきた。
そして、アンネが3本目の剣を突き刺した瞬間、レティが樽の中に吸い込まれてしまった。
「へ・・・え?レティ様!!?」
何が起きたのか理解したアンネは、慌てて樽の上に飛び乗ると、レティの消えた穴の中を覗き込む。
「どういうことじゃ・・・何が起こったんじゃ?」
「あぁ、心配無いよ・・・その穴は湖に繋がってるからさ。
本当は、この仕掛けは飛び出すはずなんだけど、飛び出したらヤバイだろ?」
そう言って清宏は上を指差した。
それと同時に、外からレティの笑い声が聞こえてくる。
清宏はそれを敢えて無視した。
「天井か・・・確かに、飛び出して打つかったら死ぬかもしれんな」
「そうなんだよ・・・だから、地味になっちまうんだよな」
「地味とはの・・・派手さを重視する物でもあるまい?」
「いや、派手な方が楽しめるだろ?もっと呼び込むつもりなら、インパクトは大事だよ。
ただ罠に掛けるだけじゃいつかは飽きられる・・・何かしら違った手法も取り入れないとダメだ」
「その仕掛けですけど、外に飛ばしたらどうでしょう?それなら天井は関係ないですし、飛んで行った人の分は宝物も取られないですよね?
マットか何か用意しておくか、湖に向かって飛ばせば死ぬ事は無いと思います」
リリスを抱きしめたまま、シスが提案する。
だが、その提案を清宏は首を振って退けた。
「マットだと、風が吹いたら落下地点がズレて危険だ。
湖に向かって飛ばしたとしても、高さと距離、飛び出す速度を考えると無理だ・・・水面への落下時の衝撃は、岩盤に当たった時と同等になる場合もあるから、最悪挽肉になってしまうよ」
シスは清宏の説明を聞いて青ざめた。
「空で誰かにキャッチして貰うにしても、し損ねたら終わりだから、今まで通り滑り台で湖に落とすのが無難かな・・・まぁ、まだ試作品だし改良の余地有りだ」
清宏がそう締めくくると同時に、レティが戻ってきた。
広間に戻ってきたレティを見て、皆が顔を赤らめているが、清宏には変化がない。
「おかえり、どうだった?」
「そうですね・・・剣を刺された時のスリルは良い感じでした。
仕掛けが作動した時に自分がどうなるのかって言う不安感もなかなか楽しめましたから、大丈夫だとは思います・・・でも、いざ仕掛けが作動しても、吸い込まれるだけだと本人は何が何だか解らないうちに湖に落ちちゃうので、そこは残念かなって思いました」
レティは楽しんでいた割にはしっかりとダメ出しをしている。
「そうか・・・お前が戻るまでの間、俺達も作動後について話しをしたが、お前とそんなには変わらなかったよ。
作動後をどうするかはまた考えておこう。
それにしてもお前・・・上着はどうした?」
今まで普通に会話をしていた清宏が、レティに尋ねる。
戻ってきたレティは上着が無くなり、トップレスの状態だったのだ。
「わかりません!途中で何かに引っかかって脱げちゃいました!」
レティは恥ずかしがりもせず、笑っている。
彼女の形の良い膨らみが上下に柔らかく揺れている。
「まったく、お前も少しは慎みを持て・・・ちょっと待ってろ」
清宏はアイテムボックスからバスタオルを取り出してレティに掛けてやる。
「そのまま風呂に入ってこい、お前の服は俺が探しといてやる。
レイス、レティを案内してやってくれ」
樽の上によじ登り、レイスに指示を出した清宏はレティの服を探すため、樽の中に入り込む。
「おぉ、ありがとうございますご主人様!」
清宏に礼を言ったレティは、レイスの後をついて行く。
リリスとシス、アンネの3人はその後姿を呆気にとられて見送る。
「リリス様・・・清宏様とレティ様は、何故まったく動じられないのでしょうか?」
「正直妾には理解出来ん・・・」
黙々とレティの服を探している清宏を見て、3人は深いため息をついた。
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