第84話
冷凍室のなかで、友里はおもむろにノートパソコンを取り出した。
かじかむ手を擦りながら、ノートパソコンの電源をいれ、デスクトップへと移動する。
_______監視カメラのデータは……あった。これだ。モニターにはこういう風に映しているからここをこうすれば……
「よし、出来た。」
ノートパソコンに写っているのは、数日前の監視カメラの映像。これでもう監視カメラは気にせずに済む。
スマホに監視カメラの映像_______無論、リアルタイムのもののほうだ_______を写し、外を確認する。巡回のパターンはすでに頭に入っている。
体にそこいらでよく売り出されている男性用の香水をふりかけ、一応年のためにフードを深く被り、赤いマフラーを口元に巻き付け顔を隠す。
友里は装備を確認し、冷凍室の扉に手をかけた。
外は、相変わらず誰もいなかった。
◇◆◇
友里は、ヒトのいないショッピングモールを堂々と歩いていた。
向かうところは決まっている。近くの窓のカーテンを片っ端から開けながら、ドラックストアの中へと入る。
ぐちゃぐちゃに荒らされた陳列棚の中から、消毒用エタノールを取り出し、バッグの中からガソリンのなかに保管していた金属ナトリウムを取り出す。
_______ガソリンは臭いがある。最後に仕上げとして使おう。
友里は、ドラックストアに来る前に拾った空き瓶10本にエタノールを注ぎ込む。アルコールのきつい香りがドラックストアに広がった。
手早く作業を終え、次に陳列棚の中からオブラートを取り出す。
瓶の中、エタノールには触れないくらいのところに膜になるようにオブラートを張り付け、ガソリンの中から取り出したナトリウムのかけらをオブラートの上に設置する。
_______火炎瓶の、できあがり。
友里はにこりともせずにその危険物を片手に持つと、ゲームセンターの方へと足を進めた。
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