第131話 挑戦状


「騎士校戦?」


 俺は換金したお金をパエルという生徒に手渡しながら訊き返した。傍らで、商精霊がお辞儀をして消えていく。


「先ほど、国母様からの御使者が参られました」


 答えたのは、デイジー・ロミアムだ。

 フレイテル・スピナからの書状を預かったらしく、黒塗りの盆に載せて持って来ていた。


「次は・・シフートか。どれかな?」


 迷宮探索で手に入れた魔物の遺棄物が机の上に並べられている。尾があれば凄い勢いで振っているだろう期待に充ち満ちた表情で、獣耳のある少年が立っていた。


「すべてお願いします」


「分かった。商精霊、カモンっ!」



 樽のようにお腹の出た精霊が現れた。今日は大忙しだ。



『さてさて、どの品を売っていただけますかな?』



「これ全部・・いくらになるかな?」



 犬鬼の牙、大腿骨、豚鬼の肉、睾丸、胆石・・。

 油紙に包んだ物から、瓶詰めの物まで様々揃っている。以前は一つ一つに指で触れなければ査定も出来なかったが、レベルがあがったおかげで、俺が触れなくても査定できるし、すべてを一括査定、一括買い取りをしてくれるようになった。


『これでしたら・・2万と6000セリカになりますぞ。買い取りを行いますかな?』



「どうする?」


 シフートに訊くと、


「お願いします!」


 喜色満面、獣耳少年が頷いた。



「じゃ、買い取って」



『畏まりましたぞ。さてさて、代金は口座振込みでよろしいですかな?』



「うん、よろしいよ」



『さてさて、またの御用命をお待ちしておりますぞ』



 商精霊がお辞儀をしながら消えていった。



「ええと、2万6000だったな」


 俺は個人口座から貨幣を取り出した。わざわざ数えなくても、額を思う浮かべるだけで正確な枚数の貨幣を取り出せる。まあ、金種は高額貨幣からの順になるけど・・。


「はい、これ」


 差し出した貨幣を、シフートが両手を揃えて受ける。まだ手が小さくて危なっかしいが・。


「ありがとう御座います! これ、手数料の100セリカです」


「うん・・あぁ、デイジー、開封して読み上げてみて。急ぎかもしれないから」


「畏まりました」


 じっと待っていたデイジーが、恭しくお辞儀をして封書を開いていく。


「最後は、ファンティか。おっと・・かなり集めたな」


 白髪の少女の前には、シフートが持ち込んだような品に加えて、茸や苔、液体が入った瓶まで並んでいる。


「頑張りました」


 少し照れ臭そうに笑いつつ、ガッツポーズを作って見せる。


「商精霊、カモンっ!」



『さてさて、どの品を売っていただけますかな?』



 樽型体型の精霊さんが笑顔で登場する。



「スピナ様からの書状、読み上げますか?」


 デイジーが訊いてきた。


「う~ん、内容だけ纏めて教えて・・商精霊さんは、この品を全部査定してみて」



『ムムム・・』



「おっ、ムムムが出た!」


 商精霊がこれを口にした時は特級品が混じった時だ。今回は高額品があるらしい。


「口頭でも御座いましたが、過日、退校した者達の父兄から色々と苦情が上がっているそうで、去らずに残った者達の力を見せろと・・そういう内容ですね」


「ふうん・・」



『51万9000・・いえ、52万セリカになります』



「ぅお・・凄いね。どうする、ファンティ?」


「換金お願いします!」



「全部買い取ってよ」



『畏まりましたぞ。さてさて、代金は口座振込みでよろしいですかな?』



「うん、いいよ」



『さてさて、またの御用命をお待ちしておりますぞ』



 商精霊がお辞儀をしながら消えていった。



「とんでもないね。ええと、52万セリカ・・」


「あ、先生っ・・」


「ん?」


「また預かっておいて貰えませんか?高額ですし・・」


「ああ、そうする? というか、ちゃんと記録してある?」


「はい。えと・・今までお預けしたお金と本日のものを合わせて、235万4702セリカになります」


 ファンティが手作りの手帳を見ながら言った。


「・・あってる?」


 俺はユノンを振り返った。


「はい。正確です」


 ユノンが帳簿を見ながら頷いた。


「よし、じゃあ預かっておく。それから、なんだか、みんなに関係しそうな事が起きてるみたいだから呼んで来て」


「はいっ」


 ファンティが身を翻して教室へと走っていった。


「腕試しかな?・・相手は?」


 俺はデイジーから書状を受け取りながら訊いた。


「退校した者達から選ばれた者、そして年長組の騎士見習いから数名と書かれていました」


「・・雑魚ザコじゃん」


 今の華奢な体付きのファンティでも、デコピン一発で小鬼を斃しちゃうんですよ? それはもう、ガッツリ鍛錬積ませましたからね? ぶっちゃけ大鬼を連れてきても相手になりませんが?


「ですよね」


 デイジーが苦笑を漏らした。


「フレイテルさんは、その実力差を見せつけたいのでしょうか?」


 ユノンが俺から受け取った書状を読みながら呟いた。

 まあ、あの国母さんの事だ。そんなつまらない用件だけじゃ無いんだろう。


「それにしても・・」


 ちらと視線を向けた先から、リリン・ミッターレを先頭に、4人の生徒達が駆け戻ってきた。


 授業開始から4ヶ月目。


 すでに当初の目標は達成し、今は4人で小隊を組んで迷宮の54層で地走龍の巣に挑んでいる。装備品もかなり整ってきた。


(まあ、装備くらいは、平凡な物に替えさせないと・・)


 知り合いの洞窟人に依頼して製作して貰った品を身につけて戦ったら、装備のせいにされかねない。


(なんなら、ヒノキの棒でも良いんだけどねぇ)


 俺は口元に笑みを浮かべた。

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