第54話 女神の間
「あ・・あれ?」
いきなり周囲が真っ白になってしまった。
『久しいな・・コウタ・ユウキ』
「・・ああ、女神様ですか」
『驚かせたか?』
「まあ、ちょっぴり・・」
『
「俺、何にも言って無いですよ?」
『うむ。連れの女だ』
「ああ、あの残念な司教ね」
『人間というものは、戦闘を基準に事の優劣を決めたがる。
「あいつ、剣神の加護と比べてどうこう言ってましたねぇ・・」
『
「ははは・・
『ふふふ、まあ良い。コウタを招いたのは別の用件じゃ』
「俺、何かしましたっけ?」
『身体があまりにも
「いや、普通ですよ? 人間って、普通はこんな感じですから」
『コウタは、兎の皮を持っておったな?』
「・・ああ、ありますね」
雷兎の皮は倉庫にある。最初に仕留めた大物ということで売る気になれず、かと言って使い道が思い付かず、そのまま死蔵していた。
『出すが良い。あの皮を対価に、力を授けてやろう』
「・・毛むくじゃらは嫌なんですけど?」
『案ずるな。見た目に変化は起こらぬ』
「そうですか・・それなら」
俺は、雷兎の皮を取り出した。まあ、真っ白で何も見えない。
『これは・・ずいぶんと大きく育った兎よな』
「ですよねぇ」
『対価としては十分じゃ。雷兎の毛皮、その身に宿してやろう』
「毛むくじゃらは嫌ですよ?」
『くどい。女神に二言は無いぞ』
「・・では、お願いします」
『よし・・』
「え・・もう宿りました?」
『うむ』
「あ・・そうですか」
えらく
『しかし、あれほどの大兎をよく仕留められたものだ』
「偶然でしたけど・・美味しかったです」
『食したのか?』
「完食しました」
『・・異界の者は、そうした行為に慣れぬと聴くが珍しい奴がおったものじゃ』
「空腹は最高の味付けなのですよ」
『ふむ、言い得て妙よな。さて・・おお、そうじゃ。おぬしに授けた槍を出すがよい』
「ぇ・・ええと、すっごく気に入ってるんで、取り上げるとか勘弁なんですけど?」
『馬鹿を申すな。与えた物を取り上げるような事などせぬわ』
「・・本当に?」
『くどい』
「・・じゃあ、はい」
俺はしぶしぶと細槍を取り出した。
『ふむ・・よく使い込まれている。すでに・・真名を得たか』
「キスアリスでしょ? 良い名前ですよね」
『そうだな』
女神が笑ったようだ。
『剣神イズマオに大きな顔をさせておくのも
「おぅっ!? 加護の技ですか?」
『いや、この槍に固有の技だ。他の槍では成し得ない』
「十分です。俺、その槍・・キスアリスがあれば他の武器とか要らないんで」
『ふふふ・・槍も良き主人に巡りあったと喜んでおる。これからも、精々使ってやるが良い』
「もちろんです・・が、技というのは、どうなりました?」
『槍が教えてくれる。時間はそれなりにかかるが・・戦いの中で、一つずつ覚えていくが良かろう』
「ありがとうございます」
俺は満面の笑みで御礼を言った。
『これからも、月光神が
「お任せあれ!」
両手で拳を握って見せた。白いので見えないけど、たぶん・・。
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