第二十五話 三国会議、開催される。そして……

 アドメラルクが一人ドラクマに向かったと聞いた弥生は、すぐにルスカに知らせる。


「アドメラルクめ……余計な事を」


 ルスカは先を越された悔しさと、自分が寝込んで動けなかった悔しさで顔を歪ませるのだが、その口元はどこか嬉しそうで。

アドメラルクへの対抗心か、ルスカはようやくベッドから立ち上がった。


 アドメラルクが居なくなってから、一週間が過ぎようとしていた時、ルスカに朗報が。

それはレイン帝国からヨミーを伴いやって来たルーカスの娘ヴァレッタと盲目のメイラ。

二人からの朗報はアカツキの呪いを解く手がかりとなる薬の材料の正体であった。


乾燥した尻尾のようなもの、緑色した粉末状の粉、小瓶に入った白い液体。この内の緑色した粉と白い液体が判明したのだ。

そして、名前を聞いて驚いたのはその場にいた弥生、流星、カホ、そしてタツロウの四人。

この四人の共通項。それは全員転移者であるということ。


「「「「抹茶とドブロクーー??」」」」


 四人は唖然とする。転移前は未成年だった為にドブロクは名前を知っている程度であったが、抹茶は流石に知っている。

しかし、その朗報をタツロウが否定する。


「ちょっと、待ってぇなぁ。抹茶なら俺でも知ってる。見たらわかるやろ?」


 ミーガにしまっていた現物を取り出して確認するが、何処と無く匂いが違うように感じた。


「うーん、抹茶……じゃないよね、これ」


 抹茶にある青っぽい草の薫りがかなりきつく、鼻の奥にまで匂っている。


「やよちゃんの言うように、ちょっと青臭いかも」


 ヴァレッタ達から見つけた経緯を聞き出すと、ルスカは一つの仮説を立てる。

この二つは昔から調味料として使われていたのだが、今はもう使用する人は少なく、自作して使う程度しかないという。

ルスカの仮説は、昔と材料は違っており今は名前だけが、残されたのではないかという。


「じゃあ、昔の転移者が抹茶やドブロクを飲みたくて、見よう見まねで作ったのかも」


 弥生の意見に一同は同意するように頷いた。

その時、部屋の扉をノックして一人の兵士が入ってくる。


「失礼します。ルスカ様、それと流星様、グルメール王国から使者が到着しましたので会議室に来てほしいとのことです」

「わかったのじゃ、すぐに向かう」


 呼ばれたのは二人なのだが、結局全員を伴い会議室へと向かったルスカは、グルメール王国からの使者の顔触れに驚く。

てっきりワズ大公やダラス辺りが来るものだとばかり思っていたのだが、代表として現れたのは、パクことエルヴィス国王の姉リュミエール、そしてその婚約者でもあるナックに、そして御付きとしてやってきたミラージュであった。


「リュミエールやナックはともかく、なんでミラまでおるのじゃ!?」

「ふふーん。実はこの度、正式にリュミエール様とナック様が正式に家を興すことになりまして、私が使用人としてついていくことになったのです。わかりますか? ナック家で一番偉い使用人になるのですよ」


 元々はリュミエールに仕えていたのだから、当然といえば当然なのだが何をそこまで胸を張るのか、リュミエールすら含む一同よくわからなかった。


 ナックからはグルメールに攻めてきた魔族の話を聞き、改造魔族を倒したクリストファーに驚くも、何より問題はその改造魔族の正体に言葉を失ってしまった。


「うそ……れ、レイカちゃんが……」


 大切な親友を辛い目に合わそうとした麗華を許せず一番怒っていたカホであったが、いくらなんでも酷すぎると流星の胸の中で泣き出す。

麻薬を盛られそうになった本人である弥生すらも、悲痛な表情を浮かべる。


「くそ! 馬渕め! 一体、一体どうしたらこんなこと出来るんだよ‼️」


 流星は、まず間違いなく関わっている馬渕に対して激しい怒りをぶつける。


「ぐすっ……ほ、ほんとだよ。昔はこんな人じゃなかったのに……ここに転移してきてから一体何が……」


 すすり泣きながらカホは、微かに馬渕に同情を向けるのだが、カホ達は知らない。


 馬渕がここに転移してきて性格が変わったのは間違いないが、それは元々いた世界で被っていた仮面を脱いだだけであることを。


 麗華の事を知っている者達は一様に悲痛な表情を浮かべる中、会議室には各国の代表達が集まってくる。


 主催のグランツ王国からはイミル女王本人とアデルが、レイン帝国からは全権を委ねられているルーカス、それと娘のヴァレッタも。

グルメールからはナックとリュミエールの二人、流星はギルド、そして現在グランツリーの外壁に従事しているゴブリン達の代表として参加する。

そして、ルスカは各国のトップから全幅の信頼があるとして、この三国会議を取り仕切ることになっていた。


 細かな取り決めは、各国代表が決めるとして、まずは戦争の発端であったグランツ王国が、その非を認めた。

イミル女王は、領土の割譲を提案したが、帝国、グルメール共にそれを固辞する。


 グルメールが求めたのは、まずは人材であった。

パクという若い王の元、人材といえばワズ大公やダラス、ナックぐらいなもので、各地方を治めるものが少なかった。


 一番被害の少なかったレイン帝国ではあったが、各国にあった冒険者ギルドを手放す代わりに、食料や販売経路の確保を求めた。

軍事国家であった帝国にとって、農作物が豊かなグルメールやグランツ王国とは違い、自国で賄え辛い。

グランツ王国との取引もわざわざシャウザードの森を経由しなくてはならず、商人の往来が少ない。

それに一計を投じたのはルスカであった。

グランツ、帝国の両国を結ぶ道をシャウザードの森の一部を整備することを提示したのだった。


 グランツ王国としては、グルメールに移住希望者を募り、シャウザードの森の整備の経費を没収した貴族達の財産でグランツ王国が払うということで納得した。

しかし、イミル女王が何かを自ら求めることはなく、帝国、グルメール両国の代表は困惑する。


 そこで、いまだに不満の残るイミルの女王就任を両国が支持することを約束する。両国が支持することでイミル女王への不満を抑え込む狙いである。


 各国の代表が、それぞれ署名したあと、最後にルスカが署名をすると、長年歪みあっていたグランツ王国とレイン帝国は、この日初めて手を取り合ったのだった。


 そして三国会議の代表としての役目を終えたルスカは、エイルの元へと向かう。

この日までエイルは中々決断出来ずにいたが、ようやく腹を括る。


 エイルから話を聞いたルスカ、そして弥生は唖然としたまま頬を涙が伝う。


「い、今、なんて……」

『ソノ“アカツキ”ト言ウ男ニ、力ヲ与エルト言ッタノダ。但シ、ソレニヨッテ一時ハ動ケルダロウガ、ソノ男ハ因果カラ外レルシ、呪イヲ解カナケレバ、イズレ動ケナクナル。

レプテルノ書ガ何故人ニ、チカラヲ貸シテイルノカハ分カラヌガ、ソレハ神獣トシテ反シテイルノデナ』


 呪いを解かなければ、いずれは生きる屍となってしまい、その後、呪いを解いても意味がないというリスクはあるものの、ルスカと弥生は馬渕がレプテルの書を持つという最悪な状況下から少し脱け出したことに、何よりアカツキに会えることが嬉しく、その場でお互いに抱き合っていた。

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