第二十章 攻撃

第二百一話


 シロとログハウスに戻った。

 やはり、ログハウス・・・庭園に転移門を作ろう。庭園からホームに移動できるようにしておけば、好きな時に、ホーム経由でログハウスに戻ってこられる。


「シロ。いつ頃がいい?」

「結婚ですか?」

「そうだよ。俺とシロの結婚だよ」

「僕は、いつでも、今日でもいいです!」

「準備ができていないだろう?」

「準備?」


 なにか、俺の常識と違うような気がしてしょうがない。


「シロ。結婚とかはないのか?」

「ありますよ!教会に行って、神に報告します」


 どうやら、俺がしっている様な結婚式は行わないのが普通のようだ。

 披露宴もないのだろうか?


「・・・。そうか、俺が悪かった」

「え?え?え?」


 シロに俺が考えていた事を説明する・・・のは、辞めよう。

 フラビアとリカルダを巻き込んで、シロに気が付かれない様にして、準備を進めていきたい。


 いわゆる、サプライズという奴だ!


「シロ。少し落ち着け」

「・・・。はい」

「シロ。ホームに入って中の様子を見て必要な物を揃えて欲しいけどダメか?」

「カズトさんは?」

「少し用事を思い出した。フラビアとリカルダに会ってくる」

「わかりました。ホームの中はどうしましょうか?」

「うーん。シロは、洞窟とログハウスとホームではどこがいい?」

「カズトさんと一緒ならどこでも大丈夫です。僕は、場所にこだわりません!」


 違うのだけどな。

 やっぱり、少しずれている。そこも可愛いからいいのだけど、はっきり言わないとダメかもしれないな。


 でもな・・・。

 初めて抱かられるのに、場所はどこがいい?なんて聞けないよな。


 よし、決めた。ホームにする。

 ほかは、邪魔が入ってしまうが、ホームなら邪魔になりそうな者を排除出来る。


 シャイベのRADで、家や部屋が作られる事は確認できている。

 そして、家や部屋にはいる為の扉や部屋に認証が付けられる事も掃除をしながら確認した。他のダンジョンで作ったような認証が使える。


 転移門を設置している部屋も別々の区切りを作って、小部屋にしている。

 認証の扉を付けているから、小部屋からは出られるけど、ホームの敷地内?には入ってこられないように、転移門の小部屋を置いている建物からは出られないようにする事が出来る。


 俺とシロだけの部屋を作る事ができたのだ。

 ダンジョンコアたちは、前室にダンジョンコアの本体を置いておくことで、認証がかかった部屋に入られない。”自己申告”だが信じるしかない。

 クローン達は、認証には引っかかるが、クローエのとくちょうである次元移動が有効になってしまっていたのだ。

 ただし、次元移動も部屋の認証を超える事はできないのだと説明されているので、”自己申告”だが大丈夫だと思っている。


 イヤーカフスと腕輪を外せばいいだけだ。

 他の眷属たちも、俺とシロだけが入られる部屋にすれば入ってこられない。


 この決定に、最後まで抵抗したのが、ステファナとレイニーとリーリアだ。

 寝室の横に控室を作って、そこで待機していたいようだ。目的は、シロが本当に俺に抱かれるのかを確認するためだと言っている。そんな事が必要なのかと思ったが、必要なのだと強弁しているのだ。特に、ステファナが強硬に反対している。なんなら、一緒の部屋で控えさせてくれとまで言い出してきた。


 いずれ、控室を作る事で納得させた。

 シロが、最初は二人だけにしてほしいと懇願したからだ。慣れてきたら、大丈夫だと言っているが、何が大丈夫なのかは確認していない。


 なんにせよ。ホームは、きっちりとプライベートルームになっている。

 したがって、ホームの部屋を充実させるほうがいいだろう。洞窟やログハウスにある物で必要な物やシロが欲しい物をリストアップさせるだけでも意味がある。


「シロ。ホームのプライベートルームの調整を頼む」

「はい!」


 ホームを起動して、扉からシロが入っていく、ステファナとレイニーにも手伝いを頼む。

 認証を切ってあるので大丈夫だろう。


 カイ。ウミ。ライ。エリン。アズリ。クローエは、他の眷属たちと一緒にホームの中の魔物の調査及び間引きを行う事にした。

 それほど大きくはないが群れに発展している者たちも居る。安全面を考えて間引きを行う事にしたのだ。魔物が出ないようにする事も出来るが、皆からこのくらいは出たほうがいいという事なので、本当に危なくなるまで現状を維持する事に決めた。


 俺に従うのは、オリヴィエとリーリアだけだ。

 ダンジョンコアもクローンと一緒にホームの中に居る事にしたようだ。クローンたちチアル/ペネム/ティリノ/シャイベがシロを気に入って側を離れない。守りが強化されるから俺としては歓迎なのだが、本体を俺にあずけてクローンがシロを守るような感じになっているのが、少しだけ納得できないだけだ。


「マスター。どちらに?」

「そうだな。リカルダとフラビアと話がしたいけど、どこがいいと思う?」

「宿区でどうでしょうか?」

「頼めるか?」

「かしこまりました」


 オリヴィエが、ログハウスの執務室を出ていく。


「ご主人様」

「どうした?」

「いえ、先日のナーシャ殿に振る舞った料理ですが、再現してよろしいでしょうか?」

心太ところてん?」

「はい。それ以外にもいろいろお作りになったと思います」

「そうだったな。でも、レシピはメイドドリュアスに渡したよな?」

「はい。レシピは頂いていますが、あのままですと、料理が出来る者にしかできません。失礼ながら、シロ様には作る事ができないと思います」

「ん?シロ?」

「はい。これから、シロ様とホームのプライベートルームで過ごされる事が多くなると思います」

「あっ!そうか、シロが料理をしたがるという事だな」

「はい」

「以前から、シロ様から言われていまして、シロ様がご主人様よりも、料理ができないことを気にされていまして・・・」

「そうか、気にしなくてもいいのだけどな」

「ご主人様。それは、難しいかと思います」

「そうか?」

「はい」


 別に出来る方が料理をすればいいと思うのだけどな。

 それじゃ納得も満足もできないのだろうな


「わかった。他にも簡単にできそうなレシピを渡すから、シロにでもできそうな物を考えてくれ」

「はい。甘味ではなく、通常の料理ですか?」

「そうだな。甘味はそれほど必要ないだろう?フルーツとヨーグルトと蜂蜜があれば十分だからな」

「かしこまりました」


 肉料理や野菜料理のレシピを書いて渡しておく。

 完成されていない所もあるとおもうので、調整も合わせて行ってもらう。


 1時間程度リーリアと料理を作ったり、味付けの話をしたりしていた。


「マスター」

「どうだ?」

「はい。お二人とも、宿区の温泉宿でお待ちです」

「ありがとう。リーリア。あと任せていいか?」

「はい。お任せください」

「あ・・・。でも、今からの話は、オリヴィエよりもリーリアの方がいいかな?シロの事だからな」

「シロ様の事?」


 結婚式の説明も簡単にした上で、2人にシロとの結婚式を考えていることを告げた。


「マスター。それならば、リーリアの方が適任でしょう。あと、できましたら、ヌラに話が通るようにして置くほうが良いかと思います」

「そうだな。オリヴィエ。ヌラへの伝言は頼んでいいか?」

「かしこまりました」

「マスター。あと、元老院のメンバーにも話をしておいたほうがよろしいかと思います」

「ん?それほど大げさにはしないぞ?」

「はい。解っていますが、元老院のメンバーとルートガー殿とクリス殿とヨーン殿や獣人族と竜族とイサーク殿たちはお呼びにならないと今後の体制づくりが難しくなります。あと、できましたらゼーウ街からも招待した方がよろしいかと思います。そのためにも、元老院を最初から巻き込んでおくのがよろしいかと思います」


 言われてみたらそうだよな。

 ローレンツも呼んだほうがいいだろう。


「わかった。オリヴィエに任せる。当日は、ローレンツと確かコルッカ教の司祭がいたよな?呼んだほうがいいだろう」

「かしこまりました。元老院で現状動けそうな人間を呼びに行かせます」

「頼む」

「はっ」


「リーリアには手間だと思うが頼むな」

「かしこまりました」


 リーリアと温泉宿に移動した。

 この宿は会議が出来るように小部屋も用意してある。


 一番奥の部屋に通された。


 10分くらい経ってから、フラビアとリカルダが部屋に入ってきた。


「ツクモ様。お久しぶりです」

「そうだな。2人とも代わりはないようだな」

「はい」「もちろんです」


「あとで、ミュルダ老とメリエーラ老が来ると思うけど、今日は相談が有って来てもらった」

「はい。なんでしょうか?」

「シロ様の事ですか?」


 2人に、シロとの結婚を報告する。

 婚姻の意思は伝えてあったのだが、しっかりした宣言となる。


「ありがとうございます」「ツクモ様。本当に、ありがとうございます」


 2人からお礼を言われたが、俺がお礼を言われることではない。とは、思うが嬉しい事には違いない。


「それで2人には頼み事というか、相談がある」

「なんでしょうか?」


 フラビアが答えてくれるようだ。


「結婚は神に報告して終わりだと聞いたけど、それで間違いないか?」

「はい。もう私たちは関係があるわけでは無いのですが、アトフィア教では合同で結婚の意思がある男女を教会に集めて、司祭が神に夫婦の名前を報告する形です」

「そうか?そのときの服装は?」

「服装?」


 フラビアもリカルダもピンときていないようだな。

 やはり、服装までは気にしないという事か・・・。


「家族や知り合いへの報告もないのか?」

「ありません。ただ、両方の家族が顔見知りの時には、食事会が行われますが、司祭とか聖騎士などの上の人たちだけですね」

「そうか・・・。俺が知っている結婚式だけどな」


 日本で行われていた、披露宴の説明をした。


「そんなことをするのですか?」

「どう思う?」

「それを、シロ様にやっていただけるのですか?」

「あぁ俺も、着飾ったシロを皆に見てほしいからな」

「・・・。ツクモ様。全力でご協力いたします」


「シロが恥ずかしがらないか?」

「大丈夫です。多少の恥ずかしさも節目の日という事で納得してもらいます」

「そっそうか」

「はい。それで服なのですが・・・」

「オリヴィエがヌラに話を付けてくれる事になっている。糸でも布でも好きな物を用意させよう」

「ありがとうございます。デザインはどうしましょうか?」

「いくつか、シロに似合いそうな物を考えるから任せていいか?」

「もちろんです」


「ご主人様。結婚式でのお食事はどういたしましょうか?」

「そうだな。フラビア。リカルダ。祝の席で出してはダメな食材や飲み物はあるのか?」


「アトフィア教での取り決めですが、その日に殺生した物は出してはダメと言われています。あと、家族は食事会が終わるまでは酒精を摂取してはダメだと言われています」


「リーリア。アトフィア教は関係ないが、このくらいは守ろう」

「はい。家族の範囲はどういたしますか?」

「そうだな・・・」


 フラビアとリカルダが目をそむける。

 酒精を摂取したいのだろうが、自分たちでいい出した事なので守ってもらおう。


「そうだな。俺の方は、クリスを除く眷属でいいだろう。シロは、眷属とステファナとレイニーとフラビアとリカルダだな」

「え?」「・・・。やっぱり・・・」


「かしこまりました」

「うん。俺とシロとフラビアとリカルダは結婚式が終わってから飲む事にする。それは問題ないのだろう?」

「はい!」「もちろんです」


 料理は、リーリアが音頭を取って、メイドドリュアスたちが準備する事になる。

 シロが着るドレスは、ウエディングドレス風の物とチャイナドレス風な物に決まった。こちらは、オリヴィエがフラビアとリカルダをヌラに引き合わせて、準備を行う事になる。シロのサイズは寝ている時に、ヌラの眷属たちがこっそり測る事に決まった。

 フラビアとリカルダからのお願いで、結婚式披露宴に出席する女性陣が決まったら、全員分の服を作る事になった。必死にお願いされて、ダメだとは言えなかった。シロのドレスよりも豪華にしないようにだけ言っておく、主役はシロなのだということをしっかりと認識してもらう。


 それにしても、オリヴィエが遅いな。

 元老院でなにか問題が発生したのか?


 フラグだった。


「マスター!申し訳ありません。元老院までご一緒してください」

「それは構わないがなにか有ったのか?」

「・・・。はい。元老院に、ゼーウ街に行っているリヒャルト殿からヘルプが来ています」

「わかった。急ごう」

「はい」


 はぁ・・・。

 どうやら結婚式はまた少しだけ延期する事になりそうだ。

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