第106話 挨拶嫌い
小学校低学年の頃から、母は私に他人に対して「挨拶するように」というのをうるさく言うようになった。
それは当たり前の事なのだが、声が小さかったり、タイミング的に遅かったりなどすると帰ってからグチグチと言われるのがとても不快だった。
それだけではなく、元気に挨拶をする他の家の子に出会うと帰ってからその子の事を引き合いに出して、私は人見知りが激しいからダメだ、恥ずかしい等の事を言われていた。
その影響で高校卒業前ぐらいまで、挨拶が大嫌いだった。
中学の時に全校で「挨拶運動」というのがあり、すれ違った先生に挨拶するとチケットをもらえて、それをたくさんもらおうという期間があった。
それも私は大嫌いだった。
挨拶から逃れられるわけが無いのは分かっていたし、ちゃんと相手に聞こえる声で気持ちよく挨拶しないといけないのも分かっていたが、それをするのが何故かとても苦痛だったのだ。
克服出来たのは、高校の時に使っていたバスの運転手さんに「ありがとうございました」と言うようになったからだ。
このバスの運転手さん、定期でも整理券を取らないとめちゃくちゃ怒るとか、学生がたくさん乗ると舌打ちしたりで、学生にすごい評判の悪い運転手さんだった。
他の学生が怒られたり舌打ちされているのを見て、それに私は頭にきたのでキッチリ挨拶してやろうと思い、ハッキリした声と言いかたで降りる時に
「ありがとうございました」
と言うようになったのだ。
今は営業職なので、知らない人にも挨拶する。
だからだろうか、やたらと道を尋ねられる事がある。
バスの運転手さんにはムカついたが、運転手さんのおかげで挨拶恐怖症が治ったのでそれは良かったのかもしれない。
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