第95話 私の存在を知らない彼の両親
一緒に暮らし始めたのは秋だった。
なのであっという間に、年末年始がやってきた。
彼は実家が関西で、毎年休みには帰っているそうで(そういえば昔、帰省の途中で岐阜の私のところに寄ってくれた事もあったなぁと)今年も帰ると言う。
私にも気を使って一緒に行く?と聞いてくれたが、彼のご両親に対して初めましてが、いきなり大晦日辺りなんで嫌なので断った。
私は実家に帰る気が無かったので、ネコと年末年始はお留守番をする事になった。
彼は気を使って、何度か電話をくれたけれど一人ぼっちの年末年始は寂しかった。
この後分かった事だが、彼はご両親にまだ私の存在を伝えてないらしい。
ネコを飼い始めた事は話しているというのに。
この時は、何ふざけてるのと思ったが、彼としてはひたすらに気恥ずかしかったという事らしい。
という事は、彼の誘いで年末年始に彼の実家に行かなくて正解だったとホッとした。
ご両親も、いきなり息子がお正月の帰省時に彼女を連れてきたらビビるだろう。
しかも遠距離なのだから泊まりだし。
この後、GWに彼のご両親が遊びにくるという話が出たのだがその頃になっても彼はまだ私の存在は話していなかったのだ。
さすがにご両親が遊びにくるのに、これ以上言わずにおくのはダメでしょうと彼にせっついた。
ご両親としては、彼が前のワンルームマンションから3部屋もある部屋に引っ越して、しかもネコまで飼い出したと聞いたら
「ならばちょっと部屋を見に行ってみるか」
と思ってもおかしくないだろう。
というわけで彼もやっと私の事を話してくれて、ご両親には36歳にもなったんだから(彼は私と同い年)遅いぐらいだと言われたらしい。
悪い印象はないようだ。
結果的に、この時はご両親の都合が悪くなって来る日は延期になったのだけど、話してくれた事によって今度は私たちが彼の実家に行くという事になったのだった。
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