第1章 『ツヨシ、元気だせ!』(1) 


 で1、2を争う堅牢と名高い刑務所で。

 

 懲罰房に入り。


 望まざる脱獄をし。


 見つかって。


 懲罰房の収監期間と刑期の延長という憂き目に遭いつつも。


 そんな馬鹿なことを繰り返している囚人がいる。


 俺だ。


「なんでこんなことになっちまったんだよおおお」

 

 俺は独房の硬いベッドの上で身もだえた。


 室内はうす暗い。天井の近くにある小さな採光窓から、ほのかな朝日が差し込んでいる。


 正面にある檻がぎらりと光を反射し、そのさらに奥にそびえる重厚な扉に影がさす。


 閉塞感に息が詰まりそうになる。


 明日になれば、俺はまた『望まざる脱獄』をしてしまうので、一時的に閉塞感からは逃避できる。


 だが根本的にこの状況から逃げられるわけではない。


 10分経ったら戻ってきて「いつものやつです……」と刑務官たちに頭を下げながら、脱獄未遂の常習犯として罰せられるという未来は確定している。


 刑務所内では、俺は『プチ脱獄』の名手として、もっぱら囚人や刑務官たちのうわさの的になっているらしい。


「ちくしょう……こんな無限牢獄、あんまりじゃねえか……」


 目に涙が浮かぶ。


 俺は憧れの異世界にやってきたはずなのに、なぜこんな状況に陥っているのか。


 どうしてプチ脱獄を繰り返してしまうのか。


 10分間、いったい何をしているのか。


 正直に話しても誰も信じてくれないが、嘘をでっちあげてもどうにもならない。


 技術が進歩し、子どもでも簡単に魔法を使えるようなこの世界においても、俺の置かれた状況すべてが非現実的な話なのだ。


 ではどうしろというのか。


「やるしか、ねえか……」


 のことも迎えに行かなきゃいけないしな。


 この世界に来て数日。その間、すでに3回の『望まざる脱獄』をして、ようやく決心がついた瞬間だった。


 俺の力があれば、やれる。


 ゆっくりと体を起こし、鉄よりも頑丈そうなその金属の檻を見つめ、俺はごくりと唾を呑んだ。



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