第553話 水底からの告発(4)迫る
ピシャッ、ズズズ・・・ピシャッ、ズズズ・・・。
その音と共に、西川さんは盛実議員と力丸に這い寄って行く。
「く、来るなぁ!」
おはようございます、先生
ピシャッ、ズズズ・・・、ピシャッ、ズズズ・・・。
「お、俺は、知らん。全て力丸のした事だ。恨むなら、こいつにしろ!」
「え!?何とかしろっておっしゃったのは先生ですよ!?」
「殺せと誰が言った!?俺は知らん!」
ピシャッ、ズズズ・・・ピシャッ、ズズズ・・・。
僕は、西川さんに近付いた。
「西川さん。後は警察が」
西川さんはゆっくりと僕を見上げ、傷口を指さした。
ここに、証拠を
「傷口に?何かを隠したんですか?」
SDカード。贈収賄の、証拠
「痛かったでしょうに……。決して無駄にはしません。ありがとうございました」
西川さんは盛実議員と力丸に目を戻し、最後に、ガバッと襲い掛かるようなしぐさをして2人に盛大な情けない悲鳴を上げさせてから、消えた。
放心状態の力丸と錯乱状態の盛実議員をよそに、ブロックがクレーンで引き揚げられた。そこには西川さんの遺体が押し込まれ、胸の裂傷の中に、ジッパー付きの小袋に入れたSDカードが押し込まれて隠されていた。
サンマを焼いて大根おろしを添え、牛のしぐれ煮は小鉢に。笹カマボコ、ずんだ豆腐、大根とあげとネギの味噌汁をよそい、土産物ご飯、完成だ。
「できたよ」
「緑色のお豆腐だあ。きれーい」
甥の
「米沢牛?初めて食べるわ!」
冴子姉は牛に目が釘付けだ。
「美味そうだな」
「ビーフジャーキーも買って来たし、ふかひれスープと米沢牛のすき焼きは今度食べよう」
「楽しみねえ!」
「ねえ!」
「じゃあ、いただきます」
皆で手を合わせて、食事にする。
「贈収賄か。証拠が出るかどうか、ヒヤヒヤものだったらしいな、県警では。本部長が進退をかけていたらしい」
兄が言うのに、僕は改めてホッとした。
「良かったよ、本当に」
「でも、復興を食い物にするなんて最低だわ」
「どういう時もそういう事をする奴がいるんだよな」
「敬、悪い事をしたら、隠してもいつか必ずバレるんだぞ。だから、正直にな」
「はい!」
敬は元気よく返事をして、また食事に集中する。
「ともかく、お疲れさん」
兄とノンアルコールビールのグラスをカチンと合わせ、グイッと飲む。
ああ、美味しい。
あ、明日の朝一で報告書を上げないと……。面倒臭い。
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