第446話 心霊特番・神奈川(3)新しい噂

 敬がお土産に夢中になっているのを見ながら、僕と直は兄と冴子姉にロケの顛末を話していた。

「何事もなく済んで良かったな」

 兄がホッと息をつく。

「でも、大山貝塚は本当に凄い所だったねえ」

「ああ。あそこは行きたくないってユタが言うの、わかるな」

 僕と直が言うと、冴子姉がへえ、と目を丸くする。

「そんなに?」

 僕と直は、こっくりと頷く。

「もう、嫌だ」

「ごめんだねえ」

「そこまでか。

 それで、そのかわぜんはどうしたんだ?」

 近いので、兄はこちらが気になるようだ。

「ミラーハウスに居場所を変えたよ。そこなら、たくさん鏡像があるからバレにくいし、本人も、観察と練習にしか興味が無いようだし、まあいいかなって」

「噂になってるわよ、ネットで。ミラーハウスにモノマネの幽霊がいて、もし見付けられたらラッキーだとか」

 冴子姉が言って、

「放送が楽しみねえ」

と笑う。

「回転木馬に仮面を付けて乗るのが流行ったりしてな」

 兄が言う。

「まさかあ。ははは。……まさか、ね」

「テレビの影響力は凄いしねえ。それにそうなったら、遊園地側としても儲かるしねえ」

「ありそうな話だなあ」

 いや、プッシュしかねない。

「そうだ。来月くらいにでも遊園地に行かないか?美里も敬と行きたいって言うし」

「いいな。6人ならレンタカーでワゴンを借りるか。

 ああ、隣にも声をかけるか」

「そうね、いいわね」

 兄と冴子姉も賛成した。

 耳敏く聞きつけた敬が、顔を上げる。

「遊園地?」

「そう。いっぱい乗り物があるところだぞ」

「ブランコ?」

「グルグル回るやつがあるな」

「行く!」

 敬は言って、膝に乗って来た。

「お弁当持って行こうな。敬は何が食べたい?」

「プリン!」

「プリンか……」

 プリン弁当?ムムム。

「敬はプリンが好きだねえ」

「よし。じゃあ、皆で行こうな」

「康君に言って来る!」

 玄関に走って行く敬を、冴子姉が追いかけて行く。

「平和だねえ」

「まあ、4月になったら忙しいぞ」

「だな」

「だねえ」

 春がそこまで、近付いていた。




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