第403話 新人研修(1)二次試験その後
試験が終わり、思わず遠い目でこの1ヶ月を走馬灯のように振り返ってしまった。
「長かったよねえ」
直も、そうしみじみと言う。
「まだ結果はわからないし、これに合格したとしても、各省庁訪問があるけどな」
「それでも、気分的に楽だよねえ」
「確かに」
4月終わりから公務員試験の1次試験。次は5月半ばに、司法試験の論文式と短答式。そして、この2次試験である。
2次試験は1次とは違って、面接とグループでの政策課題討議だ。数人ずつのグループで討議をするのだが、内容は当然の事、リーダーシップや協調性なども観察される、自分だけでは何ともしがたい、実に気を使う試験だ。
僕と直は別のグループになっていて、お互いによくは知らない。
正直、僕のグループはやり難かった。やたらと張り切ってリーダーシップを取りたがり、反対意見を出そうものなら、青筋を立てて唾を飛ばす勢いで迫って来るやつがいたのだ。それに委縮して喋らなくなる学生もいれば、反発して見下すように突っかかる学生もいたので、まとめるのにうんざりした。
と、その、勝手に僕を「ライバル認定」する学生が僕の前に立った。
「御崎君!今度会う時を楽しみにしているよ!」
「あ、うん。でも、合格するかどうかわからないよな」
「自信が無いか。やっぱりな。はっはっはっ!」
殴りたい。そう思っていると、近くにいた同じグループだったやつも、何かを堪えるように深く溜め息をついていた。監督官も、苦笑している。
それを見て、直も何かを察したように乾いた笑みを浮かべた。
「じゃあ!」
彼が背中を向けた時は、その辺一帯の学生はホッと息をついた。
彼は皆にとっても、多大なるストレスだったらしい。
「まあ、いいや。帰ろうか」
「そうだねえ。夏の肝試しシーズンを前に、新人研修を頼まれてたしねえ」
「ああ、そうだったな。こういっちゃあ何だが、面倒臭いな」
「だねえ。ボク達、あんまりスタンダードの霊能師じゃないからねえ」
それでも仕方なく、僕と直はまずは着替えに帰る事にした。
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