第371話 幽霊屋敷(3)封印せしもの
開けた途端、金本さんはギャッと言って放り出した。
そして、それを見た途端、皆も後ずさる。平気でしゃがみ込んだのは僕と直だけだった。
「封印されてたから、まあ、こんなもんだな」
「そうだねえ。よくもったほうだよね、この程度で」
頭蓋骨だ。埋められた時は生首だったのだろうが、今はすっかり白骨化している。
「何時代くらいかな」
「古そうだよねえ」
僕と直はのんびりと話しながら、それを観察していた。
壺の中には、頭蓋骨と一緒に、その人物の霊も封じられていた。
封印を破ったのか
「子孫の方が」
金田さんと谷本さんを指す。
「かなり前の方ですよね」
平将門が敗死したとこの前聞いたが
「940年だから、平安時代か。
あなたはこの家を守る為にここに?差し向けらたあれをわが身で封印して」
そうだ。一族を代表して、その任を受けていた
そして、周りを見回した。
我は、失敗したのか
「子孫が謂れを知らずに掘り起こしたんですよねえ。あなたは完璧でしたよう。ねえ」
「そうです」
頭蓋骨に向けて喋り出した僕と直に慣れていない村木さん達4人は、落ち着かなさげにしていたが、今の言葉で皆が金田さんと谷本さんに注目した。
「え?」
「後は僕達が引き受けますので、ご心配なく。お疲れ様でした」
頼む
それは頭を下げると、姿を薄くして消えて行った。
それと反対に、気配を濃くしていくものもある。
「さて」
「重しが外れた途端だねえ」
僕と直のそばに、慣れた皆はすぐに集まる。そして村木さん達4人も、何事が始まるのかと慌てて寄って来た。
「ここにいて下さいねえ」
直が結界を張って皆を覆う。
「6体か」
熊、犬、猪、蛇、ヒト。それらが家の敷地の外でゆらゆらと地面から沸き上がるように出て来ると、実体化を始める。
「この家は、他の有力者からか、刺客を差し向けられたりするのが常態化していたようです。それで、それを封じ込めるための呪術的結界を、一族を代表してこの方が引き受けて来られたんです。
それを掘り起こしたから結界が切れて、押さえていた刺客も現れたんですよ」
村木さん達4人は、目を剥いて言い争いを始める。
「お前らのせいか、あの化け物は!」
「そんな事知らないわよ、書いてなかったんだから!」
「どうにかしなさいよ!」
「どうにかって、どう──」
そこで、バッとこちらを見る。
「除霊、承りますよお」
「料金はですね──」
説明責任を果たそうとする僕と直に、彼らは一斉に騒ぎ出した。
「いいからやって!」
「払うから、お金は!」
「では、契約書を」
「いやあああ!!来る!!」
まあ、このくらいにしておくか。部の皆は、苦笑している。
「じゃあ、逝こうか」
僕は刀を出して近付き、直は札を準備する。
「よりどりみどりだねえ」
「先着順でいいかな」
犬が体を低くしながら走り、飛び掛かって来る。それを一刀で斬ると、突っ込んで来ていた猪の首を落とす。そのまま足を進め、前足を振り上げて威嚇する熊に斬りつけて、片付ける。そして、跳びかかって来た蛇を半分に斬ると、後は、ヒトが2人残った。
2人は警戒していたようだが、いきなり飛び掛かりかけたところを、札で足止めされて硬直する。そこを、悠々と斬る。
単純にこの一族の人間を狙うだけのもので、数の割には単純で雑魚だ。大して苦労することなく、刺客6体を屠る。
「はああ。助かった」
金田さんと谷本さんはホッと息をつき、そして、肩を落とした。
「大切な物、か」
「確かに、大切な物ね」
真先輩は、静かに村木さん夫妻に言う。
「事故物件では無かったと、お分かりいただけたと思いますが」
「はい。どうもありがとうございました」
「申し訳ありませんでした」
訴えるだのなんだのと、色々と言っていたらしい。
「浄霊の費用ですが」
「あちらのお2人でしょう?」
「そちらも折半で」
「どうしてですか。そちらの先祖のものなのに」
「おたくが今の地権者ですし」
金目のものでないと分かった途端、押し付け合いだ。
「さっき、払うって言いましたよねぇ?」
うんざりとしながら言うが、4人は、互いに、相手を差す。
「サインもらうまで、祓うんじゃなかったかな。これ、何て報告しよう。面倒臭い」
「見苦しいねえ」
心から、溜め息が出た。
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