第409話 末姫さまの思い出語り・その18
私が階段から落とされた日のこと。
女学院の現状をご存じだった上皇ご夫妻と女帝ご夫妻から、必ずや潰すようにとの命を受けたお庭番と冒険者が動いた。
週末も警備の衛士がいるはずの学院は、夜番の衛士は見回りもせずグッスリだったそうだ。
眠り薬を使う必要すらなかったと報告があった。
そのすきに書類という書類を全て押収し、お庭番と優秀な街専の冒険者、各省庁の精鋭部隊が寝る間も惜しんで精査した。
その結果、女学院の長年の悪行が明るみにでた。
「道理で質の悪い侍女が増えたはずです。成績と実力が反比例しているのですから。もしこれで王城を混乱させようという意図があったとしたなら、それはそれで成功してはいますね」
「みみっちい作戦ではありますがね」
ディーおじ様とスケルシュのおば様がため息をついた。
「瓦版で
「・・・こんなどうしようもない計画を長年隣国から仕掛けられていたんですよ ? そしてそれに気付かなかった。それが噂ででも広まれば帝国への不信につながります。ですから悪事はあったけれど、若い令嬢が自らを囮にして傷ついてまでそれを暴いたと、そちらを前面に押し出して陰謀そのものを隠蔽します」
そうですか。
あの嘘八百の記事はその為でしたか。
すっごく恥ずかしかったんですけど !
もう一か月たつのにまだ続いているんですけど !
「それでギルマス、隣国の様子はいかがですか」
「うーん、ほぼエイヴァンの予想通りだったよ。物語の強制力というものを感じた」
ギルおじ様が出したのはあの国の王族の一覧。
「事前情報にあった王家について。何と言うか、お人好しというか性善説を体現したような方達だったよ。王族にありがちな傲慢不遜なところもないし。王というよりどこかの村長のような気楽さがあった」
「・・・」
何十年も帝国で暗躍していて ?
「こう言ったらわかるかな。絵本に出てくる人の良い王様。裏表のない気の良い一族。人を疑わず世の中の暗い面を全く見ることのない王族。ありえないだろう ? 」
そんな王族、本当にいるんだろうか。
善意の塊と言われる母だって、侯爵家当主として日々気配りは忘れていない。
高位貴族や依子はもちろん、『大崩壊』の時に関わった貴族、平民にまで季節や記念日の挨拶は欠かしていない。
それが一枚のカードと小さな花束だとしても、だ。
「あの王族たちはそういうことは一切せず、ただ敬愛だけを受け取っている。じゃあその部分を誰が担っているかといえば、あの商人から渡されたリストにある貴族たちなんだよ」
ギルおじ様の見てきたものは、国政などは全て側近に任せて何もしない王族。
だからと言って享楽に耽るわけでも怠惰に流れるわけでもない。
そこそこ威厳を保てるだけの生活をし、贅沢はしない。
気さくで大らかでいつも笑顔の良き王、良き夫、良き父。
側近はそんな王を称える。
「気持ち悪い・・・」
聞いているだけと言われたのに、私はつい口に出してしまった。
傀儡 ?
張りぼての王 ?
仕事もしないで何で王様やってられるの ?
「確かに
慰問に視察。
それらは全て貴族たちが受け持つ。
そして国民たちには外に出ることのできない国王に命じられてと説明する。
見舞金にしても炊き出しにしても、全てが国王と王妃の手配であると言い、国民はそれを信じて王族を敬う。
「まるで物語に出てくる王国のようだ。こうあるべき姿の国王、王国。まるで演じられているかのような、表に出てくるはずの負の感情と日常生活がまるで見えない。あの国に入って、王宮に忍び込んですぐにその不自然さに気づいたよ。だから、あの商人に会ってきた。彼が住んでいた時の王国について」
「陛下方がご結婚前に追い詰めた・・・」
「今はヤーマン・アフォールと名乗っている。高齢ではあるが
アフォール商会の名誉会頭で、隣国の元第五王子だと教えてくれた。
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