第348話 ウェディングプランナーがいっぱい
体調不良、なんとかなってきました。
でも元に戻すって倍の時間がかかるんですね。
皆様どうぞ、ご自愛くださいませ。
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「結婚式はお嬢様の後で」
アンシアちゃんの一言で、バルドリック様の満面の笑顔が能面に変わった。
「お嬢様のお幸せを見届けてからでないと、とてもお嫁に行く気になりません」
「ちょっと待て、アンシア」
エイヴァン兄様がこいつは何を言い出すんだと口を出す。
「もう二年も待たせているんだぞ。いつになるかわからない姫の婚礼など、どうでもいいだろう」
「どうでもよくないですよ、エイ兄さん ! あたしはルチアお嬢様に花嫁のヴェールをお付けして専属侍女を引退するんです ! 」
キリッと言うアンシアちゃんに、仲間一同で大きなため息をつく。
予定にないシナリオだ。
さて、なんと説明しようかな。
「えっと、ね、アンシアちゃん。それはちょっと無理っていうか、問題があるっていうか。ねえ、
「そうねえ、私から説明してもいい、ルチア ? 」
お願い、と言って意識をルチア姫からルーに切り替える。
姫はフルフルと戸惑うような仕草を見せる。
「前にも言ったけど、私たちの国と帝国とでは成人年齢が違うのよ」
「はい、確かずっと後なんですよね」
「成人しないとお酒も煙草も駄目だし、結婚だって親の同意がなければできないの」
ふむふむというという声が貴族の方々の間から漏れる。
こちらの世界の成人は十六だから、それまでは飲酒喫煙は禁止だ。
昔からいる日本人ベナンダンティの影響があるのだろう。
現代日本人の何人かは数千年前のこの世界で過ごしている。
現代の常識を持ち込んでいるんだ。
そして生まれた年に醸造されたお酒を、成人の誕生日に家族で飲むっていう習慣も多分ベナンダンティが持ち込んだもの。
ヨーロッパ系の西の大陸にはない。
「それでね、私たちが成人するのは二十歳。あと二年も後なのよ」
「二年・・・準備も考えればそれくらいの我慢は・・・」
バルドリック様が呟くが、ごめん、
「だけど、私たち四人、次の春から最高学府の勉強が始まるの。終えるまでに四年はかかるわ。それまで結婚はできないのよ」
「うそっ ?! 」
ええーっと言うような騒めきが広がる。
お母様だって成人の儀の年の夏には結婚しているし、皇后陛下だってその冬には皇室に嫁入りされている。
二十歳過ぎて婚約者のいない令嬢なんて、嫁き遅れも嫁き遅れ。
嫁かず後家とか呼ばれちゃう。
まず有り得ない。
「学業と主婦業の両立なんて無理よ。そんなに甘い世界じゃないのよ、学問って」
冒険者が最高学府の勉強をするのか。
なんて身の程知らずな。
コソコソと言う声を
とりあえず無視して話を続ける。
「でもね、私たちは四年だけ勉強すればいいんだけど、アルとカジマヤーなんて六年以上かかるのよ。私だって卒業後すぐに結婚なんてしないし。ルチアだってそうでしょ ? 」
「
今は新しいことを学べるのが楽しみだわ。
そう
なんだか悲しげな、残念そうな目で見られてる。
「アルたちは治癒師の勉強するの。卒業して免状をもらっても、その後もお仕事しながら勉強を続けるから、結婚できるのは三十歳前後じゃないかしら」
「・・・カジマヤー君。あたしの幸せのために治癒師の道は諦めて」
「なに言ってんだ、こら」
「あ、痛っ ! 」
ディードリッヒ兄様が呆れ顔でアンシアちゃんにデコピンする。
まあ、乱暴なみたいな声が聞こえるけど、エイヴァン兄様のグリグリ攻撃に比べればかわいいほうだ。
「こいつらが治癒師を目指していたのは知ってるだろうが。それを応援するならともかく、自分のために諦めろ ? 随分と傲慢だな、アンシア」
「だって、だって。ディー兄さん。そんなに時間がかかるなんて知らなかったし、そしたらあたし、あと十年は結婚できないんですよ ! 」
「あら、なぜ ? アンシアちゃんは好きな時にお嫁にいけばよろしいわ」
「ルチア姫はちょっとお口を塞ぎましょうか」
周囲からは「ルチア姫は、まったく」「いっそ彼が清々しいほど気の毒です」とか、「これはなんとか後押ししなければ」とか「私たちはカジマヤー君のお味方よ」とか聞こえてくる。
兄様たちは複雑な顔をしている。
なんでだろう ?
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