第346話 私が貴女で貴女が私 ? ・ ああ、ややこしやぁ
「ルー ! 」
「ルチア ? 」
私の声に振り返った
「会いたかった ! 心配していたの ! どうして会いに来てくれなかったの ?!」
「え、だって、ルチアってば寝込んでたじゃないの」
「寝込んで、あ、あら、そうだったかしら・・・」
「しっかりしてよね。私だって会いたかったわ」
具合を聞きに毎日通ってたのよ。
そう言って
「大体ルチアは頑張りすぎなの。今日だって無理して参列しなくても良かったんじゃない ? 目の下の隈、お化粧で隠しきれていないわよ」
「ルーお姉さま、お嬢様はお姉さまの晴れ姿をご覧になりたかったんですよ」
いつの間にか後ろにアンシアちゃんが来ていた。
「お久しぶりです、ルーお姉さま。あたしだってお姉さまにお会いしたかったんですよ。なのにいつもお門の前で帰ってしまわれて」
「図々しく中まで入る気はなかっただけよ。アンシアちゃん、元気そうで嬉しいわ。また一緒に活動できたらいいんだけど」
「お嬢様を見張ってないといけないのでしばらくはダメですね。目を離すとすぐに避難所に行こうとなさるんですから」
「無理するようならベッドに放り込んで叱りつけるくらいがちょうど良いのよ。ルチアはもっと自分を大切にすべきだわ」
他のご令嬢は引きこもって守られていただけなのに、なんでルチアばかりが辛い思いをして。
そんな
数字持ちは高位貴族と同等。
そう説明されてるはずなんだけどな。
「エイヴァン ! 」
カツカツと靴音を響かせてやってきたのは、このお芝居のもう一人の役者。
友情出演のバルドリック様だ。
私たちの一人二役をご存じなので、事情を説明してご協力いただいた。
何度か屋敷にお寄りいただいてリハーサル済み。
ヒルデブランド流の冒険者の挨拶、エイヴァン兄様とハイタッチして肩を叩き合う。
「リック、久しいな。親父さんが怪我されたと聞いたが」
「取り決めを無視して現場に出てギックリ腰。同情はいらんぞ」
あきれ返った最愛の妻に看病してもらえず、今は部屋に籠ってふて寝しているとバルドリック様はあきれ顔。
あれだけ念押ししたと言うのにね。
もう後進は育っているからとこっそり出かけたらしい。
んでもってひと段落したところで安心したのか腰をいわしたと。
エイヴァン兄様も苦笑するしかないみたい。
「随分と背が伸びたね、カジマヤー」
「フフッ、もうチビなんて言わせないよ」
「ひどいな。僕はそんなこと言ったことはないじゃないか」
二人のアルがそんな風に話していると、気が付けば私たちはグルリと貴族の皆さんに囲まれていた。
ご婦人方が顔を赤らめてうっとりとこっちを見ている。
なんたって似たような美形が大集合だもの。気になるよね。
今日のアバターは少しだけ本体の私たちと変えている。
髪の色とか長さとか。
パッと見で似てるけどそっくりではなくて、影武者を務めていたと言われたら納得させるくらいの細やかな違い。
ついでに態度が違うから別人に見える。
スケルシュ卿は冷静で気品があって、それでいて人の上に立つ存在。
エイヴァン兄様は大胆不敵で尊大な冒険者。
そしてスケルシュ卿が兄と対峙したときにだけ見せる少しだけ甘えた表情。
その兄弟愛の姿にご夫人方から漏れるため息が波のように押し寄せる。
いやあ
「ところでリック。一つ聞きたいんだが」
「ああ、なんだ ? 」
アバターのエイヴァン兄様がニヤリと笑う。
「お前、俺たちの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます