第673話
「其れで?」
探る為のものなのだろうが、平然とした様子で観察する感は無くローズを見据えるラプラス。
「ええ。私はアナスタシアの願いは聞き入れたいと思っているの」
「・・・」
「でも、本当に単純に不安なのよ」
「お嬢様・・・」
「彼女は私にとって、文字通り生命を賭けて尽くしてくれた使用人であり、長い時間を一緒に過ごして来た家族であり、姉の様な存在だから」
「お嬢様・・・」
「・・・」
「だから、顔もどんな人柄かも分からない人には任せられないのよ」
見据えていた瞳を閉じ、珍しく静かにローズの話に聞き入っているラプラス。
然し、ローズの言葉が止まると・・・。
「それで、我の採点結果はどうであった?」
「ラプラス様・・・」
いつもの調子を一瞬で取り戻し、よく見ろとでも言わんばかりに一歩歩み出たラプラス。
アナスタシアはそんな様子を不安そうに見ていたが、それでも二人のやり取りに割って入る様な事はしなかった。
「勿論。力は凄いし、アナスタシアを守る事は可能でしょう」
「くくく、当然であろう。我は最強の魔人ラプラス様なのだからな」
「でも、この短期間じゃ、人柄に付いては判断しようが無いわね」
「まあ、其れも当然であろう」
「・・・」
それで何の問題無いとばかりのラプラスの態度に、その奥の感情を探ろうとするローズだったが、其れをさせるラプラスでも無く・・・。
「まあ、良いわ」
「そうか」
「ええ。まだ、時間はあるのだし、知れる機会もあるでしょう」
「くくく、其れは相手側に聞くが良い」
ローズはラプラスから視線を逸らさずに、話を終わらせ様としたが・・・。
「だが・・・」
「???」
「・・・」
「何かしら?」
ローズからの視線に自身の其れを重ね、一拍の間を置いたラプラス。
「礼は言っておこう」
「え?」
「感謝する」
「ラプラス様⁈」
「っっっ⁈」
ローズへとしっかりと頭を垂れ、感謝の言葉を口にしたラプラス。
俺は信じられ無いものを見て、声を上げそうになったが、余りの驚きに言葉そのものを忘れ、一瞬声を発する事が出来なくなってしまった。
「別に感謝をされる事なんてしてないわ。アナスタシアの希望を叶えただけなのだから」
「其れでもだ」
「・・・そう。なら好きにして良いわ」
「うむ」
若干、冷たさを感じる言葉を口にするローズだったが、気にした様子も無く頭を下げたままでいるラプラス。
(ローズは何かを勘付いていて、其れを隠し続けるラプラスに不満を感じているのだろうな・・・)
ローズの様子から其の感情を理解したが、ラプラスの気持ちも分からないでも無い。
(此ればっかりはラプラスとアナスタシア、二人の問題だからな・・・)
決戦を終えた後に二人で決着をつけるしか無いだろう。
(まぁ、ラプラスも単純に旅に同行する事の許可への礼だけで無く、今迄の日々の礼も告げているつもりなのだろう)
未だに頭を下げたままのラプラスを見て、そんな事心の中を理解した俺。
「・・・」
俺は二人のやり取りに口出しも出来ないし、そうかといってラプラスが頭を下げるのをずっと眺めているのも居心地が良く無く、俺は先程ラプラスと梵天丸がPKに使用していた魔石を確認しに来たのだが・・・。
「どうしたのだ、司?」
「いや・・・」
魔石を確認する俺に背後から梵天丸が声を掛けて来たが、あんまりにもな光景に俺はちゃんと応える事が出来なかった。
(グロームの物じゃないか‼︎)
地面に突き刺さった雷光の輝きを放つグロームの魔石に、俺は大きな声を上げそうになるが、流石にローズ達のやり取りを邪魔する訳にもいかずに何とか我慢した。
(とにかく、この件はペルグランデの件と一緒にジェアンに頼んでおこう)
俺はグロームという一大戦力の復活を、ラプラスが邪魔しない様に、彼奴が強く出れないジェアンのへと頼みに向かうのだった。
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