第504話
「はあっ、はぁっ、はぁ・・・」
「ふぅーーー・・・、っ」
対峙し、互いに肩で息をする俺とスラーヴァ。
「お互い、歳はとりたく無いものだな?」
「は、はは、私はともかく、司はまだ若いだろう?」
「・・・さてな」
此方は既に実年齢なら50手前、早ければ孫の顔を見ていてもおかしく無い歳なのだが・・・。
(まぁ、その理論でいえば、此奴は数百か、千を数えていてもおかしくは無いか)
「だが、そろそろ決めたいな」
「互いに・・・、な?」
傷だらけのスラーヴァを仕留めるのに、何故こんなにも時間が掛かっているかというと・・・。
「司‼︎」
地上からのブラートの声に、自身に襲い掛かる雷の矢の存在に気付く。
「・・・っ」
「すまん‼︎」
「い・・・」
謝罪をして来るブラートに応え様とした瞬間。
「っぅ・・・‼︎」
「無駄話は、後して貰おう‼︎」
「スラーヴァ‼︎」
スラーヴァは一気に俺へと距離を詰めて来て、鈍器と化した白夜を振り下ろして来た。
こんな感じで、先程から地上よりの援護射撃に見舞われているのだった。
(ブラートとナヴァルーニイは、若干ナヴァルーニイの方が上なんだな・・・)
だが、それに付いて責める事は当然出来ない。
(ブラートやアクア達が地上の対応をしてくれなければ、まともな闘いにもならないからな)
「そら‼︎」
「ちっ・・・」
スラーヴァは重量の増している白夜で、既に、激戦の中での百を超える斬撃を放っているにも関わらず、その勢いは衰えを感じさせなかった。
(魔法での闘いを諦めて、魔力を全て肉体強化に回しているから可能なんだろうが・・・)
それでも、傷だらけの身体でよくやるものだ。
そんな風にスラーヴァに素直に感心をするのだった。
「はぁぁぁ‼︎」
「・・・っ、ほお?」
鍔迫り合いの状態から、目一杯の力で押し返し・・・。
「剣‼︎」
上空に漆黒の刃を詠唱する。
「・・・っ⁈」
「そろそろ、終わりにしようかっ‼︎」
バランスを崩したスラーヴァを、漆黒の刃で迎えとうとするが・・・。
「此れで‼︎」
地上からムドレーツが、炎の弾丸の射撃で、漆黒の刃を撃ち消した。
「・・・千日手か‼︎」
「その様だな」
俺の声に応えるスラーヴァも、正直なところでは疲れ切っている様子を隠さなかった。
〈手を貸そうか?〉
突如として、耳に響いて来たのは、相変わらずの全ての特徴を否定する様な声。
「ヴァダー‼︎」
「ほお?此れが・・・」
だが、ヴァダーの声が聞こえているのは、俺とスラーヴァだけみたいで、地上の者達は無反応で戦闘を続けていた。
「助かる‼︎」
〈気にするな・・・〉
ただ、現状は俺とスラーヴァの戦闘に介入してくれるだけでもありがたい。
俺は二つ返事で、ヴァダーの申し入れを受け入れた。
「はは、そんな卑劣な手段を使って良いのか?」
「卑劣?闘いにレギュレーションなんて無いし、戦術上の判断だ‼︎」
「まぁ、そうだがな・・・」
スラーヴァの声からは、明確に不満が感じられたが、それ以上は何も言って来なかった。
(此奴は、以前の俺がグロームに落とされた時の、受け身の姿勢についても、こんな反応をみせていたが、正々堂々とか、根性論みたいなものが好きなのかもな)
其れは、此奴の生前の最期にも関係しているのかもしれないが、現状俺にとっては、全くもって関係の無い、感情の動かされないものだった。
〈其処は心配するな・・・〉
「え?ヴァダー?」
〈今の我の力では、此処にいる守人側の者達を、全てはおろか、この数奇な宿命を背負いし者一人とて滅ぼせぬ〉
「その必要は・・・」
謙遜では無いであろうヴァダーの発言に、俺は助力のみで十分と告げ様としたが・・・。
〈だが、退場させる事なら可能だ〉
「え・・・⁈」
(此奴、俺の言葉を・・・)
態と、俺の発言を遮る様な態度をみせたヴァダー。
そんな状況に、俺が唖然とした態度を取った・・・、刹那だった。
〈行け、偽りの宿命を背負いし者よ‼︎〉
「「・・・っ⁈」」
頭の中に、ヴァダーの蒼き双眸が輝く姿が飛び込んで来て・・・。
「・・・スラーヴァ」
俺の眼前からスラーヴァが消え、地上のナヴァルーニイとムドレーツも、その姿を消していたのだった。
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