第457話
「さて、此処にするかぁ」
結局今日は、ヴァダーやオアシスは疎か、ヴィエーラ教の聖堂騎士団以外の存在を見つける事は叶わず、俺は野営の準備に入った。
(転移の護符を使用しても良いのだが・・・)
現在のところ、聖堂騎士団の連中の尾行などは無い様だったが、万が一マジックアイテムを持ち去られた時の事を考え、とりあえず砂漠で休息する事にした。
「明日はとりあえず、砂漠を横断してみるか」
航行期間を考えると、1日で達成出来るかは微妙な距離だったが、探索にどの程度の期間が掛かるかの目安を作る為にも、一度確かめておく必要も有るだろう。
「ただ、正直言ってこんなに時間が掛かるとは思わなかったが・・・」
出発前は上空からの探索なのだから、朝から夕方迄の時間で、オアシスの影位は見つけられると思っていたが・・・。
(ヴァダーの魔力により幻を見せられている可能性も有る・・・、か?)
俺はラプラスからの情報を思い出しそんな事を考えたのだが・・・。
ただ、瞳に魔力を注ぎつつの探索で、魔力の流れの様なものは感じられなかったし、魔空間の発生も無さそうだった。
(ただ、俺は魔流脈が強いから、魔空間については感覚が鈍いからなぁ)
そうなって来ると、別の手が必要になって来るが・・・。
(まぁ、あと二つは手段が残っているのだし、とりあえず探索を続けるとするか・・・)
俺はそんな事を考えながら、警戒は解かずに仮眠に入るのだった。
「ふぅ〜・・・」
翌朝、起きて直ぐ、顔の汗を洗い流し、一息吐いた俺は、空へと翔け出し地上の様子を確認する。
「・・・良し」
周囲に聖堂騎士団は居らず、自身の目的の為に、俺は捨て置く事にしたのを確信した。
(余計な争い事は避けれたのは幸運だったな)
たとえ、国王からの許可が有るとはいえ、争いになれば此方の探索の邪魔もだろう。
「飯を済ませたら、早目にでるかな」
俺は地上へと降り、朝食を始めたのだった。
「本当に何も無いなぁ」
俺はとりあえず横断を始める地点に東を選び、南東に向けて翔けていた。
「こっちの方が近いから選んだんだけど・・・」
だが、背にした海からはどんどん遠くなっているが、東の海岸線との距離が縮まるのは感じられなかった。
「リエース大森林の様に導く道は見えないし、全く異なる種の魔法か?」
既に、罠なのは確信していたが、其れがどういったものなのかは想像がつかなかった。
出発前に、ブラートから幾つかの幻惑魔法を教えて貰ったのだが、其れ等の中に考えられるものは無い。
「他にそんな事を知ってそうなのはアポーストルしか居ないんだよなぁ」
結局、再会の叶わなかった男の顔を思い浮かべながら、俺は汗を拭ったのだった。
「こうなって来ると、何方かの手を打つ事も考え無いとな」
俺の二つの手の内、前者は闇の支配者よりの殲滅の黙示録の門による、影から影への移動でのオアシスの発見。
4年の歳月は俺の魔力を成長させ、既にかなりの広範囲に闇の支配者よりの殲滅の黙示録の効果を及ぼす事が可能になっていた。
(時間的にも影に渡る事は可能だが・・・)
ただ、影の底に潜ってしまうと、俺の影は無くなり別の影から出るしか無くなる。
そうなると、どんな種の罠か判明していないので、聖堂騎士団以外の影を見つけられないかもしれないのだ。
(せっかく争い事を避けれたからなぁ)
「まぁ、此の手を使う場合。転移の護符をセットして、素早く誰かに来て貰っておいた方が良いな」
そして、後者の方は深淵より這い出でし冥闇の霧で、魔法の罠を打ち破るという手。
深淵より這い出でし冥闇の霧は、魔法ならば攻撃や支援、回復魔法と全ての魔法に効果が有り、当然の事ながら幻惑魔法も飲み込む事が可能だった。
「ただ、こっちの手は、魔力の流れも感じさせない程高等な魔法を飲み込み、俺が意識を保っていられるかは不安が残るけど・・・」
勿論、此方も以前に比べれば、かなりのレベルの魔法を飲み込んでも、意識を保てているが・・・。
「まぁ、何方を選ぶかは、ハッキリしてるよな」
俺はそんな独り言を言いながら、フェルトの準備してくれたマジックアイテムを取り出すのだった。
「此れで・・・、良し」
マジックアイテムは、3メートル四方の布に紋章が刻まれていて、俺が地面に置くと、砂漠の砂と同化していき、地面には紋章だけが残った。
「風では飛ばされ無いらしいが・・・」
フェルト曰く、一度地面に同化させれば、生物によってしか取る事が出来ないらしい。
「じゃあ・・・」
転移の護符を取り出しセットしてしまい、ディシプルの真田家隠れ家への転移の護符を取り出した俺は・・・。
「行くかっ・・・、あれ?」
其の転移の護符を作動させ様としたが、無反応の手の中の護符に、間の抜けた声を出し視線を落とす事になったのだった。
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