第244話


「どうだい、司君?」

「はい?」

「良ければ、一緒に陛下に謁見に行かないかい?」

「え、良いんですか?」

「勿論さ、陛下もお喜びになるだろうし」


 俺はデュックからの申し出を、二つ返事で了承した。


 そうして、懐かしく感じる、内装による移動音の耳障りなペルダン家の馬車に乗り、城へとやって来た俺とデュック。

 衛兵への説明はデュックが済ませてくれて、俺も簡単に入城する事が出来た。

 その衛兵の案内で通された、久し振りの謁見の間。

 俺とデュックは膝をつき、国王の登場を待った。

 やがて・・・。


「おお・・・」

「陛下、デュック=ペルダン参上しました」

「うむ、大義である。それに・・・」

「陛下、お久し振りでございます。司=真田、デュック様に同行させて頂きました」

「うむうむ、直接会うの久しぶりだな。元気であったか、司よ」

「ははあ〜」

「良し良し」

「ふふふ」


 国王は、突然の俺の参上にも上機嫌で応えてくれ、その様子を見たデュックも温和な表情をより優しくしていた。


「丁度良い、デュックよ」

「ははあ〜」

「実は先日、ディシプルで・・・」


 ディシプル進軍の件をデュックへと伝える国王。

 デュックは大袈裟には驚かなかったが、初耳であるという顔を演じてくれた。


(まぁ、デュック自体が王国の公表されて無い情報も、ある程度は握っているのだろうし、国王もそこのところは想定の範囲内だろう)


「そうでしたか」

「その件で、お主に伝えなければならない事があってな」

「私にですか?」

「うむ。その一件に、ペルダン家に所属するフレーシュ=ポーヴルテが参戦していたのだ」

「それは・・・?」

「うむ。マジックアイテム使用による不慮の事故でな」


 国王は軽く笑いながら、その事故の原因はフレーシュとアンジュにある事を続けた。


「何と・・・。それは申し訳ございません」

「まあ、まだ両名共に学生の身。それに今回もそうだが、以前のミラーシの件の働きも有る。依って今回の事故の件は不問とする」

「ははあ〜。寛大な措置、感謝致します」

「うむ。それでディシプルの復興の事だが・・・」

「は、ははあ〜?」

「ふっふっ」


 国王は俺の方へと目配せをしながら、面白そうな表情で笑い掛けて来た。


(え、え〜と・・・?何んだろう?)


 その態度に心当たりの無い俺は、ちょっと失礼だっただろうか、疑問形の反応になってしまった。


「中々に大変な仕事となる。その為、お主に人選を頼もうと思ってな」

「ははあ〜、必ずやご期待に応えてみせます」

「うむ。今回の件でディシプルは港街が全壊してしまってな」

「・・・っ‼︎」

「ふっふっ」

「全壊ですか?かなり激しい闘いだったのですね」

「うむ、そうだなあ・・・。司?」

「は、ははあ〜」

「ふっふっ」


 国王の反応の意味を理解した俺。


(街を全壊させたのは俺だっ)


 俺は今回の闘いで街に無数の魔法を仕掛け、ディシプル軍を誘い込み、街諸共打倒したのだった。

 ただ、国王はその事を責める事はせず、俺にだけ伝わる様に、若干弄る様な事をして来たのだった。


「それでは、司よ」

「ははあ〜」

「ミラーシの件と今回の件。褒美を授けたいのだが、何か望みはあるか?」

「・・・」

「ふふ、何でも構わん、申してみよ?」

「ははあ〜。では、陛下」

「うむ」

「船を頂きたいのですが?」

「船?ほお、理由を聞いて良いか?」

「ははあ〜。実は・・・」


 俺は龍神結界・遠呂智の件は隠しつつ、神龍狩りの為と説明したのだった。


「ほお・・・」

「・・・」

「ふふ、良かろう」

「ありがたき幸せ」

「司よ」

「ははあ〜」

「神龍狩り達成の折には、武勇伝を聞かせてくれ」

「ははあ〜、必ず」

「ふふ、楽しみにしておる」


 国王からは意外にも乗り気で褒美の了承を得られたのだった。

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