第161話


 翌日、再びダンジョン探索を再開した俺達。

 今日は魔物との遭遇が多くなっていた。


「此れって、そろそろ最深部が近いのかな?」

「そうですね。魔床が近づくと魔物達が活発になりますからね」

「この感じだと、僕達が攻略出来るんじゃない?」

「そうだな。他の冒険者達とはスタートで差がついたからな」

「最深部にはどんなボスが待ってますかね?」

「此処に来る迄、アークデーモンしか出現していないから、近い系統の魔物じゃないかな」

「そうなると、魔法に注意しないといけないね」

「そうだな・・・」


 ダンジョン攻略開始から1ヶ月、いよいよ最深部が見えてきた様だ。

 俺とフレーシュ、ルチルはダンジョンのボスに想いを馳せた。


「でも、ダンジョンのボスに当たる魔物を倒した証拠ってどうなるんだ?」

「魔石で確認するらしいよ?」

「他の魔物と区別出来るのか?」

「そうらしいですよ。ギルドの人間には可能らしいです」

「そうかぁ・・・、アームさんに聞いとけば良かったな」

「まあ、持って帰れば分かるよ」

「それもそうだがな・・・」


 まだ、学院では習っていない内容だったが、まぁ、実際戦えば分かるだろう。

 俺はルチルの様に何処か気楽に考えた。


「また、新手が来るぞ」

「了解。皆んな頼むぞっ」

「当然ですわっ」

「了解です」


 ディアからの気配察知の報せに皆んなに指示を飛ばす俺。

 ミニョンとルーナから返事が返って来て、俺達は魔物達を迎え撃つ為の布陣をとった。


 明くる日の放課後。

 俺達が学院からダンジョンへと移動しようと、ルーナとディアが待っている校門に移動すると、其処にはバドーともう1人、見覚えのある人物が待っていた。


「これは、お久しぶりです。真田様」

「え、えぇ・・・、ルグーン殿?」

「覚えていて頂けて光栄です」

「いえ、その節はお世話になりました」


 1年振りの再会だった。

 俺は自信が無かったので、若干疑問形の返事になったが、そこは彼も大人。

 つっこむ事は無く、社交辞令で返してくれた。


「でも、もう直ぐ、リアタフテ様になられるのですね」

「は、はい、お陰様で」

「今回は其方の件も含めて、私が派遣されて来たのです」

「そうですか。ありがとうございます」

「後もう一つ・・・」

「?」

「リエース大森林の件も担当する事になりまして、真田様に同行して頂きたく」

「なるほど・・・。今日でしょうか?」

「出来れば、明日も」

「そうですか・・・、分かりました」

「ありがとうございます。助かります」


 俺とローズの結婚式の件で出向いてくれたというルグーン。

 丁度、リエース大森林の件もあり、その捜査も行わなければならなくなったらしい。

 俺はそんな人物からの頼みを断れる筈も無く、彼の捜査に同行する事を二つ返事で了承した。

 他のメンバーには悪いが、俺達はその場で解散し、俺とディアはルグーンとバドーと共に、リエース大森林跡に向かうのだった。


「どうでしょうか?」

「・・・すいません。やはり変わりはありませんね」

「そうですか」


 リエース大森林跡に着くと、ルグーンは同行していたヴィエーラ教徒達に指示を出し、辺りの捜査を開始した。


(そろそろ、暖かいから暑いになりだしてるのに、フードで完全防備はキツイんじゃないのかな?)


 俺はルグーン以外のヴィエーラ教徒達の、目深に被ったフードとマント姿を見て、そんな心配をした。


(彼等は絶対素顔見せないマンなのだろうなぁ・・・)


 そんな下らない事を考えるしか無い程、俺とディアは暇を持て余していた。


「ちゅかさ、おなかすいた」

「昼ご飯は食べたんだろ?」

「たべてないっ」

「嘘つくなっ」

「・・・」

「ディア?」

「ちきんなんばん」

「おやつは?」

「たべてないっ」

「確か、アイテムポーチの中にチョコレートが・・・」

「え⁈」

「おやつは?」

「・・・ようかん」

「ほらっ」

「ありがと、ちゅかさっ」

「どういたしまして」


 俺からチョコレートを受け取り、頬張るディア。

 俺も自身の口へと運ぶのだった。


 結局、2日の捜査で成果を得る事は出来なかった。

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