第139話


 結局、城に戻り国王から正式に任務の続行を頼まれた俺。

 国王からはショーヴの件で謝罪をされて、俺は納得せざるを得なくなった。


(国王に謝られてもなぁ・・・)


 そんな風に思ったが、かといって再びショーヴに会うよりはマシなのだが・・・。

 なお、フォールとブラートの両名はそのまま任務に同行を許可された。

 国王曰く、成功したとは言っても一度だけだし、任務の過程での俺の魔力切れの可能性も考慮すると、その方が良いだろうとの事だった。


「それで陛下・・・」

「うむ、どうした?」

「はぁ・・・、その何と説明したら良いのか、私にも分からないのですが・・・」

「構わん。何でも申してみよ」

「はぁ・・・、それでは・・・」


 俺はこの微妙な空気の中、梵天丸の事を国王に告げたのだった。

 先ず最初に許可を得ず魔物に関所を抜けさせた事を謝罪し、リールに報告済みの事、そして其のリールに認めて貰った手紙を渡し、俺が知り得る情報を全て報告した。

 最初は俄かには信じがたいという態度だった国王。

 結局、国王は梵天丸を隠し連れて来る様に俺に命じた。

 流石に城の中に入れて良いのかと思い、再度確認したが、国王は人族の言葉を喋る魔物を是非とも見てみたいと言い、俺は渋々馬車に向かい梵天丸を謁見の間へと連れて戻った。


「ほお、この者がそうか」

「ははあ〜」

「・・・」

「おい、梵天丸」

「・・・」

「これは失礼した、梵天丸殿よ。私は此の国の王、ロワ27世と言う。以後よろしくな」

「我は梵天丸。それ以上でも以下でも無い」

「ふふ、実に面白い者だな」

「ははあ〜。申し訳ありません」

「構わん。此の様な経験二度と出来ぬわ」

「・・・」


 国王は楽しそうに笑っていたが、俺は気が気でなかった。

 此処でもし梵天丸が暴れ出したら一大事で、俺は確実に倒せるとは言えなかった。


「それで梵天丸殿よ」

「何かな?」

「うむ。何故、その終末の大峡谷とやらに行きたいのだ?」

「何故とは?」

「理由を聞きたいのだが、無理かな?」

「・・・無理と言われれば無理だが、おそらく貴殿の想像する意味では無いがな」

「うむ、中々難解な喋りをするな。其れは梵天丸殿にも説明出来る言葉が無いという事かな?」

「其れが一番近い表現かな?」

「そうか?」


 国王と梵天丸の会話は要領を得ないものだった。


(梵天丸が終末の大峡谷に行きたい理由を隠し続ける限り、此の話は進まないだろうな)


「う〜む、司よ」

「ははあ〜」

「任務もあるのにすまんが、梵天丸殿をアッテンテーター帝国との国境付近迄送ってくれるか?」

「え?良いのですか?」

「うむ。リールよりの手紙にも書かれていたが、梵天丸殿が司と戦闘後に所在不明になって以降、領内で領民の魔物による被害は出ておらんそうだし、もし過去にダンジョンで冒険者を襲っていたとしても、其れは罰する事は出来んしな」

「なるほど」

「然し、梵天丸殿だけで移動する事も出来んし、かといって、此処より他の者に供をさせるのも梵天丸殿が落ち着かんだろう」

「うむ、我も其の方が助かるぞ」

「良いか、司よ?」

「ははあ〜、承知しました」

「うむ」


 こうして、梵天丸をアッテンテーター帝国との国境付近迄送り届ける事になった俺は、其の日は国王から王都の監獄に泊まる様勧められた。


(・・・まぁ、梵天丸を連れて宿屋に泊まる訳にもいかないし、野営よりは楽だしな)


 そうして翌朝、南に向けて出発した俺達一行。

 2日後の夕方に目的地に到着し、その日は一緒に野営をし、翌朝、俺達と梵天丸は別れたのだった。

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