第137話
「・・・其の終末の大峡谷という場所は、何処にあるんだ?」
「位置の話なら此処から南だな」
「南かぁ、王都よりは?」
「王都?何かな、其れは?」
「ああ、そういう事か・・・」
王都を知らないという梵天丸。
俺がどう説明するか頭を悩ましていると、ブラートより説明が入った。
「終末の大峡谷とはアッテンテーター帝国より、更に南に向かった《ザヴィッツシャーニイ山脈》の先にあると言われている」
「言われている、ですか?」
「ああ、ザヴィッツシャーニイ山脈を越えて、戻った者が居ないからな」
「え〜と、別の方法って無いんですか?」
「ああ、船で海より向かおうとしても、難破し沈没してしまいな」
バミューダトライアングルみたいなものか?
ただ、帝国よりも南となるとなぁ・・・。
「とりあえず、領主様に確認してみないとな」
「?何故かな?」
「何故かなって、梵天丸が此の領から出て行って、他所で問題を起こさないとは限らないだろう?」
「我は問題を起こす積もり等無いが、其の事と領主に確認を取る事に、何の関係があるのかな?」
「う、う〜ん」
「分かってやれ、梵天丸よ。其れが人間社会の在り方というものなのだ」
「うむ、よく分からんな。然し、我に名を授けてくれた司の指示だしな」
「ああ、助かるよ」
「ただ、領主の許可が得られなくても、我は終末の大峡谷へ向かうがな」
「・・・まぁ、其れはその時に考えよう」
「うむ」
ブラートの助けも借りながら、梵天丸から一応の納得を得た俺。
リールはどうだろう?
おっとりはしているが、締めるべき所は締める人だから、納得してくれるかは五分五分の様な感じがした。
「司、良いか?」
「どうかしましたか、ブラートさん?」
「ああ、神木の事だが」
「ああ、そうでした。すいません」
「いや、構わんさ」
そういえば忘れていた。
汚染を解消する為に手に入れた神木。
「神木ってどう使うのですか?」
「普通に植えれば大丈夫だ。ただ・・・」
「ただ?」
「植えてしまったら、魔空間から魔力や汚染を吸収し成長してしまうのだ。問題無いか?」
「其れはどの位でしょうか?」
「此のレベルの汚染だと、かなりの大樹になるな」
「分かりました。屋敷に戻って、梵天丸の件も含めて許可を得る事にします」
「ああ、分かった」
「宜しく頼む」
俺はルーナ達にも梵天丸の件も伝え、屋敷に戻る事にした。
ルーナにはリールの許可が得たら、再び王都に向かう事になるので、一度フェルトの所でメンテナンスをしておいて貰う事にし、学院で別れた。
屋敷に戻りリールに梵天丸と神木の件を伝えると、神木の件は直ぐに許可が出た。
「其れで、梵天丸の件ですが・・・」
「それはぁ、王都で国王様にご報告をしてぇ、許可を得てねぇ」
「やはり、そうですか・・・」
「もしもぉ、許可を得られない場合はぁ、戻って貰ってねぇ?」
「・・・分かりました」
「約束よぉ」
梵天丸の件は、俺達と同行するなら、リアタフテ領から出る事は許可を得られたが、国外に出るなら国王から許可を貰う様にとの事だった。
俺が其の件を梵天丸に伝えると、全く納得はしなかったが、王都までの同行の件は受け入れた。
とにかく、ルーナのメンテナンスも有るので出発は明日の朝として、今日は野営を張る事にした。
俺とフレーシュで夕食の支度をしていると、梵天丸は興味深そうに眺めてきた。
最初、今晩はカレーにしようとしていたが、梵天丸が匂いがキツイと言い、肉じゃがに変更する事になった。
其の間にブラートは神木を植えていた。
そうして明くる朝、ルーナを学院に迎えに行き、再び王都に向かい出発した。
前回と同じく、3日目に王都に到着した俺達は、城に向かい国王への謁見を申し込んだ。
国王から直ぐに会えるとの返事を貰い、ルーナとフォールと梵天丸を馬車に残し、俺とブラートとフレーシュで謁見の間に向かった。
(国王は全員で来て良いと言ったそうだが、流石に梵天丸を入城させるのも、1匹で残すのも不味いしな)
ただ、任務の同行者とはいえ罪人に謁見の間へ通すとは、国王って結構豪胆な人だよなぁ・・・。
そうして俺達が謁見の間に着くと、其処には国王とケンイチと一人の見慣れない派手な男が居た。
「・・・っ」
「?」
何だ?
何時も其の涼しげな表情を崩す事の無いフレーシュが、謁見の間に着いてから何処か顔色が曇っている様に感じた。
(此処に着いてからというよりも、あの派手な男を見てからの様だが・・・)
そんな何処か不穏な空気を感じながらも、俺は国王への報告を始めるのだった。
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