第98話


 ギルドに着きアームからの説明を受ける俺達。

 今の所取り逃がしの報告を受けている数はワーウルフ7匹、ゴブリン3匹、ゴブリンソーサラー5匹、スライム13匹の計28匹でまだ増える可能性はあるそうだ。


「ただ闇雲に探しても見つかるのですか?」

「おお、そうでしたな。奴らは濃い魔空間に向かって行きますので、ダンジョンから出た以上は戦場となった場所へ向かいますのじゃ」

「そう言えばそうですよね」

「はい、最も集まるのは若様の軍勢とディシプル軍との戦場跡、次は昨晩若様達がフェーブル辺境伯軍に夜襲を仕掛けた場所だと思われますじゃ」

「なるほど・・・」


 なお、その様な理由から屋敷や学院、点在する村などに被害が及ぶ可能性は低いとの事だ。


「では、とりあえずディシプル軍との戦場跡に向かってみます」

「お願いします。夜襲跡地には別の者を派遣しておきますじゃ」

「わかりました」


 そうして、俺達はアームと別れ街から出発した。

 なお、魔物の追加があれば連絡を派遣してくれるそうだ。


「ミニョン」

「・・・」

「ミニョンっ」

「えっ、は、はいですわっ」

「大丈夫か?」

「も、勿論ですわっ」

「・・・」

「本当ですわ、先程はお見苦しい所をお見せして、すいませんでしたわ」

「いや、それは構わないんだが・・・」

「・・・」

「まあ、良い。いつもと勝手は違うのだから、無理はするなよ」

「わかっていますわ」


 通常ならミニョンの戦闘スタイルは、ミニョンが好きを作り、フレーシュが射撃で仕留めるというもので、そのコンビネーションは長年に渡り培ってきたもので、2人は殆ど言葉を交わさずに其れを実行していた。

 然し今回はフレーシュが居らず、通常彼女が行うフィニッシャーは・・・。


「ルーナ」

「はい、司様?」

「今回は俺とミニョンで壁役になるから、止めはルーナに任せるぞ」

「え?・・・ああ、なるほど。魔空間ですね」

「ああ、そうだ」


 今回、俺達がダンジョンから出た魔物の討伐を依頼されたのは、紛争により魔空間の濃度が増したからだ。

 それなのに俺が魔物討伐の為に魔法を使い、魔空間の濃度を高めるのは本末転倒だ。

 勿論、使用せざるを得ない状況になれば使うのだが・・・。


「止まってくれ」

「あれは・・・」

「魔物ですわね」


 俺達がディシプル軍との戦場跡に着くと、其処では魔物達の群れが我が物顔でくつろいでいた。

 ワーウルフが5匹いるのはわかるが、他も確認しておくか?


「ルーナ。銃の準備をしてくれ」

「了解です」

「先ずはスコープで、魔物の種類を確認してくれ」

「はい」


 ルーナはアイテムポーチから銃を出し構えスコープを覗き込んだ。

 ワーウルフの約半分位の身長だろうか、ただその身長に似つかわしくない程腕周りは筋肉で張り、その腕には木製の棍棒を握っているのがゴブリンでその数は2匹。

 ゴブリンと容姿は似ているが、手に持つのは杖なのがゴブリンソーサラーで数は3匹。

 そして緑色で人の膝くらいの大きさだろうか、丸くゼリーの様な身体をし、其の中には魔石が泳ぐ様に存在しているのがスライムで、数は10匹。

 スライムはゼリーの様な身体をゲル状まで伸ばしたりもしていた。


「全部で20かぁ・・・。ルーナ、先ずはソーサラーを狙ってくれ。後、炸裂弾は使うなよ」

「分かってます」

「え?どうしてですの?」

「威力の問題だ。あれを使うと魔石も木っ端微塵になってしまう」

「そうでしたのね」

「ミニョン、射撃後突撃するぞ。ワーウルフとゴブリンを頼む」

「分かりましたわ」

「良し、ルーナっ」


 俺の合図と共にルーナが射撃を開始し、其れが静かな開戦の狼煙となった。

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